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【シリーズ 資格プラス@】 第3回 アタマをクールに回転させる方法(下)

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今回は、第2回 に続いて「アタマをクールに回転させる方法」について、具体的な事例を用いてお伝えしたいと思います。

あなたの実家が八百屋さんでなければ、次のケーススタディはすぐにはピンと来ないかもしれない。 あなたは会計士だ。午後2時、遅めの昼飯を終えて事務所に戻るや、クライアントが突然訪ねてきた。スーパーを経営するA社長、その顔に困惑の色がにじんでいる。

「今度、隣町のトマトの卸会社と取引の話が出ているんだけど、前に倒産の噂があって気になったものでね」。A社長が鞄から書類を持ち出す。あなたが手に取ると、社長が入手したその卸会社の財務諸表だという。さて、あなたはまずどこを見るだろうか―。前回の記事では、自分のアタマで考えることの大切さを説明した。今回は、日々の仕事で、どのように思考力を使っていくかを見ていきたい。

A社長の携えてきた卸会社の診断に話を戻そう。年商40億円、営業利益2億円といった数字が書いてある。会計の専門的な知見で、利益率を算出するといったアプローチはもちろんある。しかし、ここに書いてあることが本当に正しいのか。その会社がデタラメの数字を提出しているのか、自分のアタマで「分析」をしてみなければならない。

トマトで年商40億円―このケースは、産業再生機構COOとして、カネボウやJALの再建に携わった冨山和彦さんの著書「IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ」(PHPビジネス新書)にある架空の設定だが、冨山さんは「具体的な商売活動として財務諸表や決算書を置き換えていく」ことを勧める。そのためには、年商40億円というアバウトな数字ではなく、月商や日商、あるいは商品単価にまで数字を細分化するのだ。店頭の相場からトマトの店頭価格を1パック240円とし、それぞれの取り分は生産者が65%(156円)、スーパーが25%(60円)、卸会社は10%(24円)と試算。そうすると卸会社は156円で仕入れ、180円でスーパーに卸すことになる。さらに年商を日商に換算すると1,100万円。数字上は、毎日6万1000パックを卸していることになる。同書では、さらにスーパーの商圏が3,000世帯で、そのうち5%が購入すると仮定。何軒のスーパーと取引をし、そのために何台のトラックが必要で―という具合に数字を弾きだし経営の実態を浮かび上がらせていく。もしトラック20台が業務で必要と試算したのに、実態は3台しかないとなれば、その会社は「稼働状況が現実的ではなく、業績が怪しい」という結論になろう。

冨山さんに限らず、優秀な経営者は「単価×客数×日数」といった算出を反射的にできる人が多い。そういうクライアントと渡り合うためにも、数字を解きほぐして自分なりに見立てをする「分析力」を養うように心掛けたいところだ。

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【前回のおさらい一覧】
【シリーズ 資格プラス@】第3回 アタマをクールに回転させる方法(下)
【シリーズ 資格プラス@】第1回  稼げる税理士、稼げない税理士
【シリーズ 資格プラス@】第2回 アタマをクールに回転させる方法(上)

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