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【会計士Xの裏帳簿】消費税増税で免税事業者が得をしているのか?

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消費税増税がいよいよスタートしました。増税それ自体はともかく、増税開始前、売上の計上時期に神経質になっていた税理士は、「始まってくれてホッとした」というのも正直なところでしょう。

課税・免税事業者間に感情的対立が

さて、増税が決まってから、事業者さんたちから非常によく聞かれるようになった話題があります。それは基準期間の課税売上1,000万円以下の場合に適用される「免税事業者」について。ボーダーライン上の事業者の皆さんは、納税義務が発生するか否かを、今まで以上に気にしているようです。

免税事業者が受け取る消費税の扱いは議論の的となっています。基本的に、納税義務がない事業者も、取引相手から消費税を乗せた金額を受け取ることはできます。それにより、表面的に、増税によって単価が上がることになります。

課税事業者からは「免税事業者は、納税義務がないのに増税された消費税をもらって『まるもうけ』ではないか」といった、感情的反発もよく聞くようになりました。いわゆる「益税」批判です。

とはいえ、それは机上の空論だとも感じます。免税事業者であっても、そのことを織り込んだ上で価格設定をされ、競争に巻き込まれることで、「益」などどこにあるのかわからなくなります。「消費税増税で得をした」と言っている小規模事業者は、少なくとも私の周りでは皆無です。

あえて課税事業者となる選択肢も

しかも、「益税」議論には混乱があります。さすがに会計の専門家にはいないのですが、免税事業者を批判する方の中には、あたかも8%の消費税が全て免税事業者の懐に入るかのような議論をする方がいますが、これは間違いです。

理由はもちろん、免税事業者は課税仕入控除ができないから。益税があるとすると、受け取った消費税と支払った消費税の差額。仕入れの割合が多い事業者にとっては、その額はそれほど高くなるわけではないでしょう。

逆に、大きな設備投資等で課税仕入が多い場合や、非課税売上が多い場合などでは、課税事業者を選択すれば還付が受けられ、有利になることもあります。つまり、免税事業者には、場合によって「損税」が発生することもあるのです。

紙幅の関係で詳しく説明できませんが、税理士の皆様なら、数年前に話題になり、当局の縛りがかかった不動産賃貸業者の「自動販売機節税」を知っていると思います。同スキームも、課税事業者を選択することによる仕入税額控除と還付を利用したものでした。

消費税増税により、受け取り税額、支払い税額ともに高くなりました。課税・免税の選択についても、今まで以上に注目を集めることになるでしょう。消費税は興味がもたれやすい税制ですが、仕組みについての誤解も多くあります。顧問先にとって最適な選択ができるよう、知識を提供していきたいところです。

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