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【会計士Xの裏帳簿】コーラの便乗値上げ問題 「消費者の選択」はどうあるべきか

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日本コカ・コーラグループが自動販売機のコカコーラの350ミリリットル缶を120円から130円、500ミリペットボトルを150円から160円に値上げすると発表。これについて、増税を奇貨とした「便乗値上げ」との批判、消費者庁など政府の規制を期待する声があるようです。

小売価格と消費者の選択の自由

同社の自販機での清涼飲料水は、消費税導入時の100円から、110円、120円と値上げしています。単純に税額だけを見ると、たしかに不必要な値上げをしているようにも見えます。しかし、何をもって不適切な便乗値上げとするのかは難しいところです。

小売価格の決定は基本的に企業の自由です。問題となるとすると、公共性の高い独占企業の値上げ、あるいは寡占状態の数社が申し合わせて同時に値上げをする「ヤミカルテル」のようなものでしょう。ある程度の競合企業があれば、ほかの事業者が値上げする中、あえて追随せず、シェアを伸ばす選択肢もありえます。

今回、興味深いのが、同社では10円刻みの値付けとなる自販機全体で増税分を調整するため、価格を据え置く商品、値上げする商品を分けていることです。コーラ等の値上げに対し、ミネラルウォーターは据え置き、お茶は容量アップで対応すると発表しています。

多くの会社が発売しているミネラルウォーターやお茶と、ライバルの少ないコーラの値付けに差をつけていることにも「あからさまではないか」という批判がなりたちそうです。しかし、逆説的ですが、この戦略が「素人にもわかる」ということも重要です。「コーラを飲むか」「自販機で買うか」を含め、結局は、私たち消費者に選択が委ねられているのだと思います。

何を賞賛すべきか 何に厳しくあるべきか

私は、消費税増税に関する最も大きな問題は便乗値上げにあるのではなく、下請け企業に対して隠然と行われる価格据え置き、いわば便乗値下げにあると思っています。これによる下請事業者の苦境については、なかば悲観的ですらあります。

一方、小売価格については、常に多くの消費者の目にさらされます。私はそれによる価格形成過程に、行政の介入を過度に期待するべきではないと思います。それよりも、消費者が多くの情報を持ち、選択に資するような知識を共有することが大切です。むしろ、値上げをしなかった会社の企業努力を評価するコミュニケーションが重要かもしれません。また、消費者に対する価格を上げながらBtoBで買い叩いている企業には、厳しい批判の目を向けて然るべきだと思います。

そして、これを機に目を向けたいのが、増税分の値上げにすらおそるおそる踏み出さなくてはならない、地域の零細企業、個人事業主の存在。大企業の一斉値上げについては、ビジネス誌を流し読んで淡々と受け止めながら、「顔の見える距離」にある事業者に不満の矛先が向くというのは最悪のパターンでしょう。

公正な市場経済を成り立たせるためには、私たちが、自分の周りで何が起こっているのかを正しく知った上で、価格だけではなく、「何を大切にするのか」という、自らの価値観を示すものとして消費行動をする「構え」なのだと思います。

最後に、以前紹介した「1000円カット」の店主の続報です。この美容院では、検討の末価格を据え置く決定をしたようです。正直言って心配もあり、複雑なのですが、その決断を応援する気持ちを伝えておきました。新年度に心機一転、短く刈った頭を撫でつつ、改めてこの場を借りて、心からの拍手を送りたいと思います。

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