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【会計士Xの裏帳簿】秋は税務調査の季節 実地調査減少から何を読み取るか

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【会計士Xの裏帳簿】秋は税務調査の季節 実地調査減少から何を読み取るか

国税当局では、7月の人事異動が終わり秋口から税務調査シーズンに入ります。今回は、国税庁が6月に発表した「国税庁レポート2014」の記述(近年の税務調査の件数データ等)を参照しながら、これからの税務調査の傾向を考えてみます。

実地調査は減少、「効率化」を図る当局

実は税務調査の件数は減少しています。平成24事務年度に国税当局が行った調査の件数は、約19万9千件で、22年度の28万3千件、23年度の28万9千件と比べて大幅減。法人税調査だけの数字を見ても、23年度に12万9千件だったものが、24年度に9万3千件となっています。

調査減少には、平成23年度税制改正で、実地調査の事前通知などのルールを明確化する国税通則法の改正が影響したことは間違いありません。直接的な法律の条文変更によるものだけではない「様子見」的な抑制も働いたと考えられます。

ただし、調査一件当たりの申告漏れ額は高くなる傾向もあります。国税庁は、「大口・悪質な納税者に対しては組織力を最大限に生かした的確な調査を行う一方で、簡単な誤りの是正などは簡易な接触を組み合わせて行うなど、効果的・効率的な事務運営を心掛ける」としています。

消費税と海外資産の調査は厳格化される

そして、税務調査の方針は税制の変更にも大きく左右されます。今年度以降注目されるのは言うまでもなく消費税でしょう。国税庁は重要項目として「消費税の不正還付申告の防止」を挙げ、仕入税額控除の仕組みを利用した課税逃れについては厳格に調査を行う方針を示しています。

また、今年から国外財産調書制度が始まりました。国税庁レポートでは「資産運用の多様化・国際化を念頭に置いた調査」についても重要項目として掲げています。諸外国との租税条約に基づく情報交換をきっかけとした調査や、海外送金に関する調査等は強化されるでしょう。

「税務調査に強い税理士」の意味が変わる?

私は、法人税の実地調査件数に関しては、今後も低い数字が続くのではないかと思っています。通則法の影響のほか、消費税調査が強化され、また相続税の課税ベース拡大も控え、法人への実地調査への人員配置にも大きく影響すると思われるからです。

ここで注目すべき点は、実地調査の代わりに、上の国税のコメントにもある「簡易な接触」が多用される可能性。税理士の間でも意見が分かれる、顧問先に税務署からの質問書や問い合わせが来た場合の対応を今一度考えておくべきでしょう。

机上調査により「ロックオン」されない申告書を作ることも重要です。KSKシステムの運用を含め、調査先の選定はブラックボックス的な部分もありますので、顧問先だけではなく、ほかの税理士との情報交換を密にしながら、国税の動向を探っておきたいものです。

税理士の「税務調査対策」というと、実地調査の際に職員に立ち向かい、派手な「立ち回り」をして税額を抑えることが注目されがちです。また、企業もその能力こそが「調査への強さ」だと考える傾向があります。しかし、これからの調査対策は、調査以前の対応のウェイトが増します。顧客にアピールしにくいスキルではありますが、税理士が担う役割は大きいのではないでしょうか。

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