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【コラム】 まもなく消費増税の年。企業の現場はドタバタ必至

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2013年12月6日掲載

2段階値上げで鋭い指摘

先日、福島県で地方議員をしている友人から興味深い指摘を受けた。
「来年と再来年で消費税が2段階引き上げじゃないですか?企業は短期間で2度も対応しなきゃいけなくなるし、業界や業種によっては大きな影響が出ますよね」

消費税は来年4月に現行の5%から8%に、そして再来年に10%に税率がアップする。消費者心理を冷え込ませ、企業業績に響く恐れは大きい。そして、その友人の話を聞いていると、企業にとっては、さらに頭の痛い問題があることに気付かされる。

「例えば宅配便のように競争激化でコスト削減が限界まで来ている業界がありますよね。1回につき、数十円の利益を上げているわけですが、わずか1年半の間に2度もお客様に値上げをお願いできるのかどうか。もしかしたら、どこかのタイミングでその数十円の利益の相当分を企業が自分でかぶる(負担する)のか?お客様にどう広報するんでしょうかね」

彼は今でこそ政治家をしているが、元は広報コンサルをやっている筆者の同業である。経歴も似ていて、私は社会人を新聞記者でスタートして現職に。彼も大手放送局の記者を務めた後、PR会社に転職した経歴を持っており、ジャーナリズムや企業広報の現場にいた頃の血が騒ぐのだろう。

ユニクロですら試行錯誤

消費増税は17年ぶりのことで、企業の現場も、そしてサポートする税理士、会計士にとっても若手は増税対応のための実務経験がない。すでに企業の試行錯誤は始まっていて、日経新聞(2013年11月26日号)によれば、ユニクロは来年2月以降、税込の総額表示から、税抜表示に切り替える方針という。しかし、柳井正会長兼社長は今春の時点では、総額表示を継続する考えを示していただけに、対応に苦慮していることがうかがえる。

一方、同記事によると、競合のしまむら等は総額表示を据え置いて増税分は転嫁しないという。手元資金に少し余裕がある企業なら、1回目の増税では価格転嫁を見送り、2回目で消費者に負担増をお願いする、というシナリオを考えられるだろう。しかし前述の友人のように、市場の衰退や競争激化でコスト削減などの社内努力をぎりぎりまで行っている業界や業種の場合、わずか1年半の間でも負担増を被るのが難しい会社も多い。

企業広報的な視点でみても、短期間に2度も消費者に負担増をコミュニケーションでお願いするのは容易ではない。そして一番やってはいけない事が、価格表示にこっそり値上げした分を含めて素知らぬ顔で売り出すような不誠実な行為。今の時代、価格の比較がネットで容易に分かる時代なのだから早晩発覚してしまう。ヒントがあるとすれば企業不祥事を起こした時の対応だ。いつかはバレる不祥事と同じく2段階値上げも自明のことだから(2段階目は政治的に見送られる可能性もあるが)、どこかの段階で必ず事実を説明しなければいけない。まずは不祥事対応と同じく誠実でいること。そして例えば大手スーパーなら社長自ら各地の店頭に法被をまとって立って、苦渋の決断であることをアピールしたり、値上げ後も支持されるように顧客のファン化を図る施策を打ったりするのがいいと考える。
経営コンサルもされている会計人の方は、クライアントが価格設定をどう顧客に説明するのか相談に乗れるように準備されておくといいと思う。

それにしても一部の経済学者で「2段階値上げではなく、5年間で毎年1%刻みの値上げを」と提言する方がいたが、企業の現場の苦労を感じられているようには思えない。

 (文/新田哲史=コラムニスト、記事提供/株式会社エスタイル)

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