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会計業界の人口減が加速する? 簿記3級の受験者数から見えてくるもの

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会計業界の人口減が加速する? 簿記3級の受験者数から見えてくるもの

近年、税理士の高齢化が会計業界における大きな関心事となりつつありますが、それと時を同じくして深刻な問題が発生しています。それが会計業界全体の若手人材の減少です。
現在、会計業界では若手層の人材採用において苦戦強いられている会計事務所が増えているようですが、その背景には、若い人材が会計業界を目指さなくなっている近年の傾向も影響していると言われています。今回の会計トピックスでは、会計系資格の入門編、日商簿記3級の受験者数の推移を見ながら、今後の会計業界の行く末を考察してみたいと思います。

数字で見る簿記3級受験者数の推移

まずは日商簿記3級の受験者数がどのような推移を辿っているのかを数値で見てみたいと思います。
今回のトピックスではリーマンショックが生じた前年(2007年)から2013年までの7年間の数値に加え、過去3年分の受験者減少率を参考に2014年の簿記3級受験者数を予測しています。
下のグラフをご覧頂ければ一目瞭然かと思いますが、実は日商簿記3級の受験者数は2010年を境に深刻な減少傾向に陥っています。リーマンショックが生じた2008年から2010年にかけては4000名強も受験者が増えたのですが、これは景気低迷期に「就職」や「転職」を少しでも有利にしようという求職者側の心理が影響しているのではないかと思います。一般的には不景気下では資格業界の売上が伸びやすいと言われますが、日商簿記3級に関してもセオリー通りの動きになっていることが確認できます。
問題は2010年の受験者数がピークに達したものの、その後、受験者数は減少の一途を辿っているということです。因みに2010年の簿記3級受験者数は41444名だったのに対し、それ以降の3年間で受験者は年平均4737名ずつ減少、昨年の受験者数に関しては過去10年で最も少ない27232名でした。このペースで簿記3級の受験者が減少すると、今年の受験者数は約22495名という結果になる見通しです。

数字で見る簿記3級受験者数の推移

若手の公認会計士、税理士が減少しているのは当然の現象

公認会計士、及び税理士試験を受験した方の多くは、その前段階で日商簿記を受けています。会計の原理原則を初歩から学ぶのであれば簿記を学習する必要があるからです。また簿記を受験して何らかの手ごたえを感じた方は更なる上級資格に挑戦する傾向があり、やはり会計系資格の入門編である簿記3級の受験者数減少は、会計業界にとって「若手人材の確保」という観点では大きなマイナスになっているはずです。
事実、今年の公認会計士試験及び税理士試験の受験者数は前年割れをしており、想定される合格者数も減少すると予測されています。この傾向が続くようであれば、会計業界も日本の人口ピラミッドと同様に若手が非常に少ない業界になってしまいます。また、団塊の世代以上のベテラン層が引退をした際に、業界全体が今以上に厳しい「担い手不足」へ陥る能性があるのです。
例えば、都内には1000を超える税理士法人が存在しますが、その事務所の後継者候補が長い間見つからなければ、多くの事務所が廃業を余儀なくされることでしょう。また、廃業を避ける手段として事務所同士の合併も進むかもしれません。会計事務所の数が減少するということは、“弱者は廃れ強者だけが残る”という厳しい競争環境に突入することを意味します。そのような過酷な業界に魅力を感じて飛び込んで来る若い人材がこのままでは増えるように思えません。そうなれば、更に未来の会計人予備群が減ることになり業界の縮小が加速度的に進んでしまうという最悪のシナリオも考えられます。

簿記受験者を増やす方法はあるのか

では、簿記の受験者を今後増やす手立てはないのでしょうか?
筆者の見解では、その手立ては幾つかあると考えています。例えば、小学校や中学校の段階から、算数や数学の勉強以外に、簿記を学ぶカリキュラムを導入してみるのも面白いのではないかと思います。子供の脳は柔軟ですので先入観なく簿記の仕組みを受け入れることが出来るでしょう。簿記は始めてみると面白いものですし、その知識を家計簿等に反映させるような機会があれば、簡易な経理の疑似体験も出来ます。また、簿記はロジカルシンキングを養うのにも適した科目だと思います。経済立国である日本が、教育の現場で簿記を導入しても良いのではないでしょうか。
また、会計業界自体が仕事内容や業務の魅力をPRしていけば、自ずとその道を目指す人も増えるのではないかと思います。既にこの分野の取り組みは、一般社団法人会計事務所甲子園(http://k-koushien.org/)が手掛けていますが、このような業界活性化や業界PRのイベントを促進することも今後は重要になってくると思います。

危機感が会計業界にもたらした一体感、これは好機か

残念ながら現在の人気就職先ランキングには、監査法人も税理士法人もランクインしていません。恐らく、学生の多くは会計業界の存在自体を良く知らないというのが実状ですので、そもそも就職先の候補に会計業界自体が入っていないのも当然のことなのです。
上記の状態は憂慮すべきかと思いますが、裏を返せばまだまだやれることは多いという事なのかも知れません。会計業界は今まで個々の事務所が各々の戦略で営業活動を行ってきた結果、一体感に欠ける特殊な業界になってしまいました。そのバラバラな状態に「税理士の高齢化」「若手人材の減少」という二重ショックが覆いかぶさり、遂に会計業界も共通の危機感を持つようになったのだと思います。
今後の10年で如何に会計業界の認知度を高められるか、そして、同時に会計業界が抱える課題(労働環境、賃金体系など含む)を改善していくかが業界再建へのカギとなるのではないでしょうか。

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(文/シニアコンサルタント)

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