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【会計士Xの裏帳簿】税理士試験受験者が大幅減 採用する側の論理

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私は当コラムで、税理士試験受験者の減少による若手税理士への影響について何度か取りあげました。今回は、試験合格者の採用を行う税理士事務所・法人の視点から、減少傾向がどう見られているのか、採用活動にどのように影響するのかということについて考えてみたいと思います。

大型法人はすでに手を打っている

現実的なことを言えば、所長税理士の中に、毎年の税理士試験の受験者・合格者の推移というマクロな状況を、自らの事務所経営と関連付けて考えている方は、それほど多いわけではないと思います。

しかし、毎年の試験動向が、すぐに採用活動に影響する事務所もあります。それは、定期的に多くの採用を行う大型税理士事務所・法人。人の入れかわりが激しい会計業界だけに、大型事務所では試験後や合格発表後に、一定数の人材を確保しておかないと、すぐに業務に支障が出ます。

中小事務所については、採用は退職により人材が不足してから行うものという認識が強くあります。現在、大規模事務所による囲い込みにより、「あれ?いつもと同じ募集要項なのに、若い税理士の反応が悪いな」と、じわじわと変化を体感している状況です。

そこから、中小事務所の動きがどうなっていくのかは未知数です。所員の待遇が上がっていくのが理想的な流れでしょうが、体力の弱い事務所については、税理士の高齢化や承継問題との絡みもあり、淘汰が進んでいく可能性もあります。

科目合格者の青田買いも進む?

また、会計人の採用で重要なポイントとして「科目合格者」があります。受験者減少により、科目合格者の確保も、事務所の重要テーマの一つとなることは間違いありません。

ここでは、科目合格者にどのような認識を持っているかが大きな問題となります。科目合格者を、未来の税理士とみるか、「ある程度簿記・会計の知識が担保されている人材」とみるかという問題です。

なかには、所員が5科目合格するか否かに無関心、それどころか「できれば合格して欲しくない」と考えている所長税理士もいるようです。雑務に追われ勉強する時間がない、試験直前期でも労働時間の調整などをしてくれない、合格後の資格者手当が整備されていないといった不満の声を勤務する科目合格者からよく聞きます。

一般企業の大学生へ向けた求人では「青田買い」が問題になりますが、税理士事務所の場合、早期に採用し、会計人としての才能の「芽」を成長させ、花開かせることは決して悪いことではありません。今後、所員の定着率アップも考慮し、試験へのサポート体制をアピールすることの必要性が、より強く認識されることになるでしょう。

二極化の傾向のなか、生き残りをかけた戦略も

若手税理士の減少は、即座にすべての事務所の採用戦略に影響するわけではないものの、遅かれ早かれ何らかの手を打たなくてはならない局面が訪れます。今後、業務量などの「見込み」で人材を募集できる大規模事務所と、それ以外の事務所の二極化が進むとも予想されます。

中小事務所の中からは、生き残りをかけて新規事業に乗り出し、イキの良い若手を中心メンバーとして迎え入れる人事戦略を打ち出す動きも出てくるはずです。転職を考える方の中には、大規模法人よりも、そのようなチャレンジングな業務に大きな魅力を感じる方もいるでしょう。

若手税理士、科目合格者の皆さんは、受験者減少という業界の趨勢にいち早く対応しようとする採用者の思惑を把握しておきたいもの。相手の要望に対し、ポイントをついた自己アピールを行うことができれば、理想的なマッチングが実現するのではないでしょうか。

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カイケイ・ファン ナビゲーターによるコメント

カイケイ・ファンナビゲーター 森澤 初美(MS-japanコンサルタント)

カイケイ・ファンナビゲーター
(MS-japanコンサルタント)
森澤 初美

それぞれの採用戦略は異なりますが、大手事務所様も中小・中堅事務所様も次世代の若手人材の確保には苦労されているのではと日々感じております。
逆に求職者様からしても、大手事務所様と中小・中堅事務所様のどちらを選択するかは、今後のキャリアプランをどう描いていらっしゃるかに左右されると思います。
5年後にどういう経験を積まれていたいか、あるいは独立されたいのか等、将来のキャリアに合った環境選びが大事ですね。

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