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【トップ会計人が語る】FAS業界で求められる4つの要素

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東京・千代田区 アーンストアンドヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社
マネージングディレクター ジャパン プライベート エクイティ リーダー 米国カリフォルニア州公認会計士
関根 俊氏

事業会社での勤務経験、米国の経営大学院を経て、国際機関のコンサルタントとして水道セクターを担当し、途上国の国営企業に対する経営改善アドバイス業務に携わる。その後、米国の大手会計事務所に移り、SEC登録企業や米国に進出している日系企業の会計監査に従事。日本のメンバーファームに移籍後は財務デューデリジェンス、企業価値評価・無形固定資産評価業務に携わる。パートナーとして主にプライベート・エクイティ・ファンドや日本企業の国内・海外での大型M&A案件に深く関与した。
2008年8月からアーンストアンドヤング・トランザクション・アドバイザリー・サービス(EYTAS)へ参画。E&Yジャパングループのプライベート・エクイティ・インダストリーリーダー、またトランザクションサポート部門の統括責任者として、財務デューデリジェンス、会計ストラクチャー、ファイナンシャル・モデル作成支援業務等、国内・海外でのM&Aトランザクションサポート業務に携わる。また大学で講師を勤めるなど多方面で活躍中。

貴社の成り立ち・事業の強みについて

2sekine-thumb-150xauto-62 日本におけるアーンスト・アンド・ヤング(以下、E&Y)は、グループとして会計監査、税務、トランザクション、アドバイザリーの4つの軸で事業を展開しております。特に私共、トランザクション・アドバイザリー・サービス(TAS)につきましては、世界中で約9,000名のプロフェショナルを擁し、グローバルプラクティスの一員として、クライアントが抱えるあらゆる課題に対してアドバイスをしております。

 TASのサービスラインとしては「トランザクションサポート」「M&Aアドバイザリー」「バリュエーション&ビジネスモデリング」「リストラクチャリング」「トランザクション リアルエステート」「オペレーショナル トランザクション サービス」「トランザクションタックス」など、財務アドバイザリー業務及びトランザクション関連の包括的なサービスを提供しており、これを通じて、クライアント企業の事業価値・投資価値の最大化、また事業リスクの最小化を行うお手伝いをさせて頂いております。
 こうした事業につきましては、他のBIG4のコンサルティングファームや独立系のコンサルティングファームでも行っておられるかと思いますが、私共、E&Yグループの強みとしては、グローバルのネットワーク・リレーションが非常に深く、そして強固であるという点が挙げられます。

 当グループはグローバルで大きく4つのエリア「アメリカ(北米、中南米)」「ロシア・ヨーロッパ・アフリカ・中東・インド 」「アジア・パシフック」そして「日本」に分かれていますが、サービスライン別に各エリアのリーダーが少なくとも月1回、多い時では毎週、会議などを通して情報交換を行っており、私もプライベートエクイティ及びトランザクションサポートのリーダーとして参加しております。また各担当グローバルのリーダーが年1回程度、日本にも来ており、グローバルでの方針を日本のカルチャーに馴染ませる取り組みも行っています。

 このように頻繁にコミュニケーションをとり、密に情報交換を行っておりますので、例えば日系企業が他国の会社を買収する案件が出たときに、電話を一本掛ければ、世界のどの都市であっても、すぐにプロジェクトチームが組成出来るような体制が出来ています。クライアント毎の高水準な要求に関して、24時間いつでも機動的にチームを組成し対応出来る点が当グループの強みであると考えております。

国内外における最近のFAS業界の現状・傾向

4_2sekine-thumb-150xauto-65 多くの日本企業が海外に出ていくことに合わせて、クロスボーダーの案件は増加傾向にあります。これは私が統括するトランザクションサポートチームにおける財務デューデリジェンスの案件もそうですが、バリュエーションのチーム、M&Aのアドバイザリーチームなどでも同様です。

 この増加傾向は一時的なものではなく、今後続いていくものと見ておりまして、これは特に円高や少子高齢化によって日本市場が縮小していくことや、2011年3月にありました震災の影響などから、企業が「リスクの分散化」をこれまで以上に意識するようになり、海外での買収の選択なども含めて検討することになったことが背景にあります。

 一方で、国内案件については、各業界における競合同士の再編の動きや、大手企業のグループ内の再編などの動きから、案件数は少しずつ増加してきています。大きく増加することは考えづらいですが、しばらくは一定の案件数が継続的に発生すると考えられます。

 クロスボーダーの案件に対応するにはワールドワイドのネットワークと、ネットワーク間でのクオリティー管理が必要です。この点ではワールドワイドのネットワークを持つBIG4が優位な位置づけにあり、この優位性は今後も続くものと考えています。

 私共としては、クロスボーダー(アウトバウンド、インバウンド)、国内、プライベート・エクイティ・ファンド等、どのような案件でも対応出来ますので、マーケットのニーズに合わせて、国内案件・海外案件とも数を維持しつつ、特にクロスボーダーなどについては強みを活かしながら、ベストプラクティスを提供していきたいと考えています。

公認会計士・また広くはアカウンティング・ファイナンスのプロフェッショナルを目指す方に今後求められる能力について

3sekine-thumb-150xauto-63 求められるものは様々ですが、特に言えば、「経営センス」「コミュニケーション能力」「リーダーシップ」「グローバルな感覚・英語力」はこれからの時代、公認会計士がFAS業界で活躍していく上で求められるファクターと考えています。

 1つ目の「経営センス」についてですが、例えば弊社のトランザクションサポートチームとしては、ほぼ監査法人出身の公認会計士のメンバーで構成されていますが、トランザクション業務に携わる上での大前提のスキルとして、高度な会計知識を有していることが必要です。しかしながら我々の仕事は、会計処理のアドバイスをするわけではなく、ディールをアドバイスするわけですので、経営のセンスや財務における高度な知識が必要となってきます。具体的に言えば、あたかも投資家になったつもりで、ビジネスの価値を理解出来るかがポイントになってきます。この経営的なセンスというのは一朝一夕で身に付くものでなく、またこれは書籍を読んだからといってすぐに分かるというものでもありません。日々の業務に対し、プロ意識を持って取り組むことで身につけていく必要があると思います。

 2つ目に「コミュニケーション能力」です。我々の業務は会計監査と違い、会計部門の方と話をするだけというわけではなく、経営企画の方や会社の中枢の方々、企業の代表者や取締役などの方々ともやり取りをします。また、業務上クライアントのみならず、投資銀行、法律事務所、戦略系コンサルティングファームなどモチベーションの非常に高い方々とのやり取りもありますので、説得力を持ってロジカルに話を展開できるか、協業する方々との連携がスムーズに取れるか、また高いレベルで交渉能力を発揮出来るなど、高い意識でのコミュニケーションスキルが要求されます。また彼らと同様のモチベーションの高さを維持しながら、仕事に取り組んでいくことが必要です。

 3つ目は「リーダーシップ」ですが、リーダーシップにもいろいろなタイプがあります。高次のもので言えば、経営者としてリーダーシップを取り会社経営を行うというレベルまでありますが、まずはプロジェクトマネージャーとしてリーダーシップを取ることができる能力を身につけることを、若い方に目指して頂きたいと思います。これはクロスボーダーの案件などの対応で海外とのやり取りが発生した際に、特に求められます。海外のメンバーとやり取りする中で、日本のメンバーは多少自己主張が弱い印象がありますが、そういった環境下でも積極的に主張し、またメンバー達をうまく説得しながら、リード出来るようなリーダーシップ感覚を身につけてほしいと思います。

 最後に「グローバルな感覚・英語力」です。業界の傾向にもありますが、全体的にクロスボーダーの案件が増えていますので、英語のスキルは非常に重要なポイントになってきます。バイリンガルレベルの方であれば評価は高いですが、仮にそうでなくても、ポテンシャルがあってこれから勉強したいという方は是非その能力を高めていって頂ければと思います。特に私共はクライアントにサービスを提供するわけなので、クライアントより高い英語能力が身につけていなければ付加価値とは言えませんので、その意識で取り組まれるとよいかと思います。

カイケイ・ファンをご覧の皆様へ一言

 海外では会計士という資格はあくまでキャリア形成の一環としてとらえられることが多く、この資格を有しておられる中で、もちろん会計監査の仕事をされる方もいれば、より経営に近い立場で仕事をされる方もいらっしゃるなど、活躍の幅は多岐にわたります。それと比較して、日本では公認会計士出身の経営者が少ないように思えます。資格さえ取得すれば安泰という時代は終わり、あくまでそれを前提として、如何に経営センスを身につけ、周りを巻き込むリーダーシップ・コミュニケーション能力を持って、組織を牽引できるか、というスキルが求められます。  公認会計士という資格を目指される皆様におかれましては、資格取得の先にあるビジネスでの現場を意識頂き、一流の「ビジネスパーソン」を目指すという意識を持って取り組んで頂くと良いのではないかと考えます。
(2011年9月1日掲載)

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