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【会計士Xの裏帳簿】決算期到来 減価償却費の未計上は融資に有利か?

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【会計士Xの裏帳簿】決算期到来 減価償却費の未計上は融資に有利か?

中小企業における「決算」の意味

3月は、多くの会社で事業年度が終了、決算となります。

非上場の中小企業にとって決算の意味合いは、大企業と異なります。なぜなら有価証券報告書の提出はもちろん、会社法上は義務である決算公告も行っている会社が少ないのが現実だからです。株主も親族しかいない場合は、総会の承認に緊張感を持って臨むという発想もないでしょう。

すると、中小企業の決算は、法人税額を出すためという税務の側面だけが注目されることになります。しかし、税額を安くすることだけにとらわれるのは考えもの。決算書は金融機関による融資審査の資料となるからです。

相反する節税対策と融資対策

節税対策と融資対策は相反する関係にあり、税額は所得が少ないほうが安くなりますが、融資審査は当然、儲かっているほうが格付けは高くなります。

決算期には社長と税理士の間でこのような会話が交わされることがあります。

社長「今年度はギリギリ赤字か・・。先生、このままだと銀行の受けが悪いんで、どうにかなりませんかね?」

税理士「うーん、今の時点で『どうにか』すると粉飾になってしまいますからねぇ・・。まあ、法人税が課税されてもいいなら、今年度は減価償却費の計上をやめておきましょうか?」

社長「そんなことができるんですか?」

年度終了後にできる決算対策は限られていますが、広く行われているものに、このように減価償却をあえてしないという手法があります。法人税法では減価償却は任意計上のため、税法上は違法ではありません。赤字が黒字に転換すれば、確かに決算書の見た目の印象は良くなります。

しかしこの調整は「無意味」という指摘が多いのも事実です。融資担当者は決算書上の数字を実質的なものに引き直して審査しています。むしろ減価償却をしていない形跡があると、ほかにも調整している部分があるのではないかと疑われる可能性もあります。

減価償却費の未計上がメリットになる場合もある!?

融資への好影響は限定的かもしれませんが、減価償却を計上しないことが明らかにメリットになることもあります。それは法人税の「欠損金の繰越控除」との関係です。法人は赤字を次年度以降7年間繰越して損金にすることができます。7年前の欠損金が残っている場合、黒字を出せば繰越額が切り捨てられるのを防ぐことができます。

この場合、黒字化に融資を引き出すためという目的があったとしても、融資担当者に減価償却費の未計上について指摘された場合は、取り繕うことなく繰越欠損金を目的としていることを説明したほうが良いでしょう。これは少なくとも融資担当者の印象を悪くする「逆効果」だけは避けることができるからです。

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