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【会計士Xの裏帳簿】「交際費バブル」で社長の金遣いが「公私混同」に!?

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2013年6月26日掲載

取引先との会食、時には酒の席での商談が、経営において重要であることを否定する経営者はあまりいないでしょう。しかしこれらの費用である交際費は悩みの種でもあります。最近はだいぶ減りましたが、社長が「つかみ金」として会社の金で夜の街に繰り出し、経理担当者(と、税理士)が頭を抱える光景も目にします。

非常にデリケートな表現が求められるところですが、交際費は経営者にとって「妙味」のある存在です。同じ所得の中小企業の社長とサラリーマンを比べて、社長の方が豊かに見える要因の一つが、会社の「顔」として交際費を支出できることにあるのは事実でしょう。

さて、この交際費、平成25年度の税制改正で重要な制度変更がありました。従来、資本金1億円以下の中小企業の交際費は、年間600万円までの金額について、90%の損金算入が認められていましたが、4月1日以降に始まる事業年度については、800万円まで全額が損金算入できるようになったのです。

この改正には、交際費による消費需要を喚起する目的があるようです。麻生財務相は今後、この交際費の損金算入枠の拡大を、原則全額損金不算入である大企業に広げるとの見通しも述べています。

政策により消費需要が増し、景気回復につながるか否かの議論も結構ですが、個々の経営者は評論家ではありません。マクロ経済を云々する前に考えなければならないのは、自身の商売です。交際費の損金算入枠が拡大したからといって、公私混同の冗費の支出を避けなければならないことには変わりありません。

しかし、こと交際費については、冗費であるか投資であるかの区別がつきにくく、いたずらにコストカットの対象とすることが得策であるとも限らないのが難しいところです。

はっきり申し上げて、税理士や会計士が、経営者同士の交流や業界団体のつながり、地域の付き合い等による個々の交際費について、将来的な利益を計数的に割り出し、費用対効果を判断する存在として適任であるとは言い難いと思います。

それよりも、会計人として経営者にアドバイスしたいのは、「財政規律」でしょう。交際費の一つ一つについて、それが会社のためになっているかどうかを経営者自身に考えてもらうこと、そして年間の交際費に、予算のタガをはめる視点を持ってもらうことが求められていると感じます。経営者が会計感覚を持つことの重要性は強調してしすぎることはありません。そのためには多くの経営者が敬遠する「ケチくさい話」ではなく、税制改正による「アメ」の部分についても説明することが効果を持つのかもしれません。

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