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【会計士Xの裏帳簿】NISAで税金が高くなる!? リスクについても説明を

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2013年8月2日掲載

最近、税理士・会計士が、関与先の経営者や資産家の方々から尋ねられる機会が多くなった制度として、2014年1月から導入される、少額投資非課税制度(NISA)が挙げられます。

NISAは、証券会社で専用口座を開設し取引した、年100万円までの上場株式や公募株式、投資信託等の配当、譲渡益等を最長5年間非課税とすることができる制度です。非課税枠は5年で500万円。非課税の期間が終了しても、翌年の新たな非課税枠に移し替え、非課税期間をさらに継続することも可能です。

来年のスタートに向け、各証券会社の口座開設に関する営業展開も本格化しています。なにしろ、NISA口座は制度の性質上、1人1つしか開設ができませんので、顧客の囲い込みは熾烈を極めています。証券会社の必死の売り込みにより、今まで株式等の取引と無縁であった人へ、投資の裾野が広がることは間違いないと思います。

NISAは、口座開設の手間はあるものの、制度として割と分かりやすく、使い勝手も悪くないと思われます。まして、もともと株式等の投資をしていることが多い経営者の方であれば、すぐに概要を理解してくれます。会計人としても、それほど勉強をしていなくても、説明することが楽な制度ではあります。

とはいえ、説明の際に注意しておきたいこともあります。非課税枠があるならば、当然に投資にかかる全体の所得税額を抑えることができるものと思われがちですが、必ずしもそうではないからです。

資産家であれば、株式等への全体の投資額が年100万円以下ということは少ないでしょう。NISA口座を新たに開設した場合、他の口座が並存することになります。そこで問題は、NISA口座で損失が発生した場合です。

NISA口座で取引される証券は、税務上は「なかったもの」とされます。NISA口座と、他の特定口座・一般口座の間では損益通算、損失の繰越はできません。利益が出た場合は非課税の恩恵を受けられますが、損失が発生した場合、課税所得を減らすこともできず、丸々損をすることになってしまいます。

しかも、NISAはもともと、2013年12月末までで上場株式等の配当・譲渡所得等にかかる10%の軽減税率が廃止されることと引き換えに出てきた新制度。出ていない利益に、より高い税率が課せられる事態になれば、投資家の心も穏やかではありません。会計人としては、わかりやすい制度に油断することなく、税リスクについても、ポイントをついて説明しておくことが必要となってくるのではないでしょうか。

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