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【会計士Xの裏帳簿】「鉄壁」の国税 情報漏えい事件は氷山の一角なのか

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金銭と引き換えに調査情報提供?

大阪のホストクラブ運営会社の脱税を指南していたとして、国税OB税理士が逮捕されました。この会社は、税理士の指導により、売上の一部を除外し、法人税約2000万円を逃れていた、との疑いがかけられています。

そして、この事件がさらなる展開をみせています。先日、同社を担当する税務署の法人課税課の上席調査官が、100万円の報酬を受け取って、その会社の税務調査に関する情報を漏えいしていたとして収賄で逮捕。また、漏えいを依頼したとして、冒頭の税理士が再逮捕されたのです。

国税当局は、調査情報の管理については厳重であるとの定評がありました。映画『マルサの女』やTVドラマでも描かれていますが、脱税の調査は、立ち入り前に内偵を進める時点で、絶対に対象者に知られてはなりません。理由はもちろん、事前に情報が流れてしまえば、隠蔽工作がしやすくなるからです。新聞記者の間でも、企業への調査情報を取ることが至難の業であることから、国税は「鉄壁」の存在として語られています。

今回の事件容疑は、直接的な調査担当者が調査対象の会社に情報を流し、脱税で得た利益から報酬を受けていたと見られるものであり、悪質性が高いものです。調査の担当者から情報を得ることができれば、フリーハンドで脱税工作ができてしまい、調査など茶番にすぎないことになります。

行政の「悪癖」 マイナンバーへの懸念

国税には個人・法人のお金に関する情報が蓄積しています。自社の調査情報だけではなく、他人、他社の税務に関する情報も、露骨な言い方をすれば「需要」があります。今回のような事例が起きてしまうような悪習が、国税にどれほど蔓延しているのかはわかりませんが、警察では、警察OBが経営、あるいは関与している探偵会社等に個人の犯歴情報を流出させるケースが何度も事件化しています。

2016年から、個人、法人に共通番号(マイナンバー)が導入される予定です。省庁が持つ様々な情報がひとつの番号に共通化されることになると、行政が持つ情報の「商品価値」が更に高まることになり、非常に懸念されるところです。

政府はマイナンバーについて「今まで各機関で管理していた個人情報は引き続き当該機関で管理してもらい、必要な情報を必要な時だけやりとりする『分散管理』の仕組みを採用しています」として、省庁間の情報は、簡単に行き来しない制度であるとしています。

しかし、今回の事件のような、あまりにあからさまな情報漏えいが常態化しているとすれば、「必要な情報を必要な時だけ」という「約束」がどこまで担保されているか、ということについても疑念が生じます。省庁と「行政OB」の癒着問題とも合わせて、今一度、詳細に検討すべきだと思われます。

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