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【会計士Xの裏帳簿】会計士協会の逆襲「会計士による税務」が持つ意味

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日経紙上を舞台に舌戦

以前、当コラムで日税連の税理士法改正に関する意見広告について書きましたが、奇しくもコラムが掲載された翌日、日本公認会計士協会が日税連と同じく日本経済新聞(10月25日朝刊)の全面広告で反論を展開しました。

日税連を名指しはしないものの、先日の意見広告へのアンサーであることは明白。「公認会計士の税務業務を制限することは『納税者の利益』を損ない、『国際標準』を逸脱するものです」として、会計士の税務能力に試験、研修等で担保がなされていること、他国においても会計士が税務の専門家であることなどを主張しています。

これらの主張自体は予想の範囲内のものですが、この広告で注目しておきたいことは、日税連への反論に加え、公認会計士協会からも、「カウンター」を当てるように税理士法改正の主張がなされていることです。

広告で「国際標準」としているのは、「公認会計士の資格で」税務を行うことです。そして広告の最後では、はっきりと「公認会計士が税理士登録を行わずに税務業務ができるよう必要な法改正を求めます」と記しています。

これはつまり、税理士資格の自動付与から一歩踏み出し、税務を税理士のみの独占業務から外すことを意味しています。日税連にとっては、税理士という資格の根本を揺るがす主張です。この主張自体は会計士協会が以前からしていたものですが、この機会に持ち出したことで、より戦闘的な印象を与えています。

「士業制度」の抜本的な改革はあるのか

傍観者的に面白がってしまって恐縮ですが、「日税連vs公認会計士協会」のバトルの一つの見方としては、激化すると、税理士会が「自動付与の廃止」、公認会計士協会が「公認会計士資格での税務」という、破壊力のある武器が持ち出され、ガチンコ勝負となる構図があります。

とはいえ、このような対立は、今までも何度か表面化しては、「特に何も起こらず沈静化する」ということを繰り返してきました。私はノンキなもので、今回の対立についても、結局そうなるであろうと思っていますし、しかも、それでいいのではないかと思っています。

以前のコラムで、公認会計士の税務について疑問視する日税連に「具体的にどのような問題があるのかはっきりさせるべき」と申し上げました。「壊れていないものは修理しなくても良い」との例えがありますが、法改正の要望が士業の権益を伸ばすことが目的と見えれば、一般の国民は鼻白むばかりでしょう。

純理論的に言えば、公認会計士と税理士が分かれていること自体に、なんらかの不合理性、不経済性をはらんでいるのかもしれません。しかし私たちは更地から制度を作るわけではありません。「士業制度」の長い歴史、また7万人の税理士、3万人の公認会計士の存在を前提にモノを考えなくてはなりません。

もちろん、制度はメリットに比べ社会的な不経済が大きければ変えるべきものです。私が現役のあいだに、この問題が本質的な意味で先鋭化し、一般国民を巻き込んだうねりとなり、ドラスティックに変わる瞬間を目にすることがあるのでしょうか。見てみたいような、見たくないような複雑な気持ちです。

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