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【コラム】 税制変更でゴルフ業界は正念場

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プロゴルファー猿が人気だった80年代

「ワイは猿や。プロゴルファー猿や!」
このセリフ、30年近く経った今でも耳に残っている。ゴルフをテーマとしたアニメで、1980年代に子ども達の人気を博した作品があったのをご存じだろうか? 藤子不二雄Aさんの漫画が原作の「プロゴルファー猿」。天才少年ゴルファー、猿谷猿丸が手作りの木製ドライバーを駆使して活躍する物語だ。当時、筆者は小学生。猿が繰り出す奇想天外なテクニックが面白くてアニメの放映を毎週楽しみにしていたが、今でも覚えているのが「旗つつみ」。猿がショットしたボールが、風にはためいている旗に押し包まれると、そのままカップインしてしまうというスゴ技だ(笑)。ちなみに猿の宿敵で、毎回強敵のゴルファーを送り込んでくるミスターXは、「旗つつみ封じ」として、たしか鉄板で出来た旗をコースに用意したこともあったのではなかったか。

景気動向とゴルフの相関関係

作品の影響で、ゴルフのイメージが子供たちの間で変わった。それまで社会的には、凄腕のプロの世界を除いた一般人にとって、お金持ちのオジサンが道楽的にやるスポーツの印象が強かった。しかし「猿」効果でゴルフが身近になり、特に子供たちの興味を喚起した。実際筆者もその一人で(笑)、小学生用の長さが短いクラブセットを買ってもらい、ちょうどゴルフにハマり始めた父親と一緒に練習場で打ち込んだ。折しも日本経済がバブルに向かっていくご時世。1987年には、ゴルフ場の練習場人口は1500万人を突破し、まさにバブルとほぼ同時期にピークに達した。道具をそろえるのはお金がかかるわけで、筆者のようなサラリーマン家庭でもゴルフを楽しむ余裕があるような景気の良い社会的背景があったわけだ。ゴルフ場も全国的に整備され、空前のブームとなった。

しかし90年代に入り、バブルが弾けると業界全体は右肩下がりの一途をたどる。1991年を100とすると、2006年に練習場人口は50%を割り込み、コース人口も09年に60%程度に落ち込んだ。そんな中、年末に不景気のトンネルから脱出する兆しを感じさせるニュースがあった。ゴルフ会員権取扱高・取扱件数で23年連続業界トップの住地ゴルフの取引価格が7年ぶりに上昇に転じたというのだ(13年12月28日・日経夕刊)。
(参考: 2015年問題とゴルフ産業の現状)

ゴルフ復権の気配と税との関連

記事によると、首都圏や近畿圏の主なコースの会員権も同じように14~118%の値上がり傾向にあるという。バブル時代、ゴルフ会員権とはいえばヨットや高級マンションを買うようなもので、億に近い額で売られていたし、土地や株と同じく投機的に売買の対象となった。その時代に比べると、記事に載っている会員権価格は400~4900万円と抑え気味のあたりは慎ましさすら感じるが、この値上げの動きはアベノミクス効果とメディア的には言いたいのだろう。

ただ、税制との関連でみると、ゴルフ業界も手放しでは喜べない。まず何と言っても4月に控える消費増税。高額な商品だけに3%の値上げと言っても出費は結構な額で増える。たとえば1050万円で取引されていた会員権なら1080万円になるわけで、30万円という金額はサラリーマンの平均月収34万円に迫る(2012年の平均年収408万円から算出)。加えて、従来は認められていた、売却損をした場合の税制優遇策がこの3月で廃止になる。これは年収額と損金額が多いほど、還付率が高くなる扱いだったので、廃止前に売却する動きが増える可能性がある。そうなるとラウンドに来る人が減ってしまうわけで、少子高齢化に伴う中長期的な対策として合わせて対応が迫られそうだ。
(参考: 株式会社フレンドゴルフ 損益通算)

(文/新田哲史=コラムニスト、記事提供/株式会社エスタイル)

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