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【会計士Xの裏帳簿】好調のNISA 税優遇を受けられない事態を防げ

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今年1月スタートした、少額投資非課税制度(NISA)の申し込み数が順調のようです。国税庁によると、1月1日時点で開設されたNISA口座数は475万件。目標値を大きく上回りました。民間調査会社は、年内に850万件を超えると試算しています。

「作って損はない」営業攻勢が奏功

同制度スタートまでに行われた金融機関のアピールは凄まじいものがありました。非課税枠が別枠で作られるだけに「口座を開設して損はない」という営業トークがしやすかったことも、スタートダッシュに成功した理由でしょう。

同制度については、以前のコラムで一定の評価をした上で、金融機関を変更できない点、NISA口座で取引した有価証券による損失がほかの口座による損益と通算できないことにより、税金が高くなる可能性について申し上げました。

金融機関を変更できない点については、利用者に、ほかの金融機関で扱う金融商品・サービスを利用したいという声が大きかったこともあり、制度改正を見越した議論が行われているようです。

損益通算が不可であることについては、おおむね知られていると感じていますが、今後、とくに確定申告期に混乱が起こる可能性があるため、事態を注視しておくべきでしょう。

税優遇が受けられない人が続出

そして今、新たに浮上しているのがNISA口座で取引した株式の配当金について、税金の優遇を受けられない可能性です。日本証券業協会、各金融機関等が、ホームページや店頭で盛んに注意を促しています。

NISA口座で取引した株式の配当金等を非課税で受け取るには、証券会社の口座でその額を受け取る「株式数比例配分方式」に変更する必要があります。配当金等の領収証を銀行口座や郵便局に持ち込んで受け取る場合、源泉徴収により課税され、非課税の恩恵を受けることはできません。

多くの口座開設者が、受け取り方式を銀行等で受け取る形にしたままになっているとの報道も見られます。この問題は、制度上予測できたことでもあり、実際早くから指摘されていた会計人の方もいらっしゃったのですが、情報の共有が不足していたことは否めません。

税制は複雑です。税理士は投資の内容について助言する立場にはなく、口座で取引するリスク商品の選択については投資家の自己責任ですが、税制については関与先にしっかり説明していかなければいけないと感じます。

NISA口座は、確かに「作って損はない」面があります。しかし、制度について知っておかないと、その利点をほとんど享受できなかったり、逆に損をしたりするということがあることは、これからも注意を促していくべきです。間口の広い制度だからこそ、会計人の役割も大きくなるのだと思います。

 

カイケイ・ファン ナビゲーターによるコメント

カイケイ・ファンナビゲーター 小林 典子(MS-japanコンサルタント)

カイケイ・ファンナビゲーター
(MS-japanコンサルタント)
小林 典子

少額投資非課税制度(NISA)、好調ですね!
スモールビジネスを支援する仕組みとして、個人事業主や家族経営の企業が、こ ぞって巷で噂しているようです。
誰もがメリットとリスクをきちんと理解して使えるよう、わかりやすくしっかり 説明してくれる会計人はいないものか・・・、と私も思います。
会計人は、サービス業として顧客に貢献することを考えると、税制の知識とプレ ゼン力の両方を磨く必要があるのですね。応援してます!

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