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【コラム】移民受け入れで企業もダイバーシティの時代!?

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選挙中に耳にしたダイバーシティの話

現代ビジネスなどで記事を書いていたので、ご存じの方もいるかもしれないが、筆者は今年の都知事選で家入一真氏の陣営で事務局長・広報担当を務めていた。ボランティアで引き受けていたので、はっきりいって零細事業の筆者には持ち出し先行の手痛い案件ではあったが(涙)、参院選や都知事選のように大型の選挙案件に参加すると嬉しいのは、新しい人とたくさん出会えることだ。

我が陣営は組織の後ろ盾がないのでボランティアのスタッフも自力で集めねばならない。インターネットを駆使した選挙戦で話題を振りまいた我が陣営らしく、Facebookを通じて集めたボランティアは登録者ベースで2400人を超えた。1月の告示直前時点では、筆者を含め10人程度しかいなかったのだから「奇跡」ではある。ただ、選挙戦は平日昼間の稼働も求められるので、定職のサラリーマン・OLの参画は限られる。そんな中、海外の大学院留学から帰国して就活中の女性に会う機会があり、彼女の話がとてもユニークで興味を持った。将来は起業して、企業組織のダイバーシティを支援するビジネスをやりたいのだという。

日本人が圧倒的主流の日本企業

ダイバーシティを直訳すると「多様性」。性別、年齢、障害の有無を問わない意味合いで使われることが多いが、企業組織においては多様なバックボーンを持つ人材を登用することになる。この概念、日本の会社では、女性や障がい者の雇用促進くらいの位置づけしか思い浮かばないが、移民社会のアメリカでは、それこそマイノリティーも含めた多様な人種、世界中から集まってきた優秀な人材をどう束ね、多様な価値観を受け入れた組織づくりをしていくか、という視点でとらえられているようだ。どうやら、彼女は、日本でもアメリカ的なダイバーシティが求められる時代が来る可能性も考えているようだ。

ただ、率直なところ、海外旅行にも消極的な“純ドメ”の筆者は彼女の話を聞いた時、すぐにはピンとこなかった。女性の雇用拡大は日本社会の中期的課題として重要さを増していることは当然認識しているのだが、経団連に加盟しているような「本流」の日本企業では、組織の中枢はまだまだ日本人が圧倒的に支配している。業界大手の社長に、女性や外国人の社長がまれに就任すると、それだけでニュースになってしまうくらいだし、グローバル化が進んだ業界でも、進出先の現地法人では日本からの出向者が舵取りをしている。

安倍総理の移民検討発言サプライズ

グローバル化が今後進むのは間違いないが、日本の企業社会でアメリカ的ダイバーシティが進むのだろうか? と疑問に感じていたところ、意外なニュースが国会から飛び込んできた。安倍総理が将来的な移民受け入れについて「検討していく必要がある」と述べたというのだ。去年の春、野党の参議院議員の国会質問準備のサポートをした際、政府の移民受け入れの見解を探ろうとしたが、法務省サイドの反応は従前どおりの規制重視だったので意外だった。何よりも、「美しい日本」の標語を始めとする、保守的な安倍さんの口から、このような発言が出ること自体、サプライズだった。

背景には、少子高齢化による人口減少の深刻化が現実味を帯びてきたことがある。それは国内市場が縮小するというだけでなく、労働力の中核である15歳以上65歳未満の生産年齢人口の割合は62%と、この20年で7ポイント減少している。日本の失われた20年のきっかけをバブルの後始末のせいにする見方はあれど、人口減少が経済的賦課をかける「人口オーナス」と呼ばれる現象に根本的要因だという指摘もあるぐらいコトは深刻なのだ。女性や高齢者も登用した「総力戦」もいずれは限界を迎える。経済界の要請で、移民受け入れが本格的に進む可能性はなきにしもあらずなのだ。

会計人もダイバーシティを見据える時代

東京の人口の高齢化が4分の1を超える2020年代のオフィス風景はどうなっているだろうか。仮に移民受け入れが段階的にでも始まっていれば、トップカンパニーでは、楽天のように外国人社員と四六時中、英語で業務を行っているのも珍しくなくなっている可能性もある。会計士、税理士の若手であるアナタも、その頃は独立していたり、事務所の中枢で大型案件を任されたりしているだろうから、クライアントの会計・税務責任者が中国人ということも考えられる。

しかし移民を大幅に受け入れるとなると、日本社会は歴史的な転換点となる。筆者個人としては、野放図な開国には慎重な意見だが、会計士のあなたも、税理士のあなたも将来シナリオはそれこそ“ダイバーシティ”化しておくことは必要なご時世のようだ。

(文/新田哲史=コラムニスト、記事提供/株式会社エスタイル)

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