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【会計士Xの裏帳簿】人気の「会計本」にもゴーストライターは存在する!

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先日のコラムで、税理士にとってのゴースト問題である「名義貸し」について考察してみましたが、今回は、文字通りの意味で、税理士や会計士を著者とする「会計本」のゴーストライター事情について書いてみたいと思います。

「先生は書く必要はありません」

一般向けの会計本は、出版界のトレンドの一つ。文筆で著名な先生、また、自らのステータスとして本の出版を目指し、積極的に動いている会計人もたくさんいらっしゃいます。
個々の著書事情に関しては詳しくは分かりかねますが、そういった会計本にゴーストライターはいるのか、ということについては「いる」と断言します。というのも、私自身がゴーストライター付きの出版の打診を受けたことがあるからです。
その出版社の方は、ある税金に関するテーマで著者となる会計人を探しているとのことでした。そして「先生は書く必要はありません」とはっきり説明されました。「著者」の役割は、ゴーストライターとの数時間の打ち合わせと、上がった原稿のチェック等とのことでした。
その案件は諸般の事情でお断りしましたが、その数ヵ月後、書店で、ある会計士の名義で同テーマの同出版社の本が並んでいるところを見て、「○○先生は、あの話に乗ったんだな」と意地悪くニヤニヤしたものでした。

会計人は文章のプロではない

私は、ありがたくもこのコラムを書く機会をいただき、毎回ウンウンうなりながら文章をひねり出していることもあり、ゴーストライターに抵抗がないわけではありません。しかし、上の例のような本の作り方がすべてダメだとも思っていません。
むしろ、昨今の一部のゴースト批判は、いささか素朴にすぎるのではないかと考えています。
知り合いの雑誌編集者がこのようなお話をしていました。
会計士や税理士に原稿を依頼すると、知的刺激のある有益な見識が含まれていても、一般の方々にとって「読むに耐えない」原稿が送られてくることが多々あるそうです。
そのような場合、構成、章立てなどを大幅に変え、細切れの文章をつなげ、ひとりよがりの表現をバッサリ削除、さらに編集者が面白い部分を膨らませ、説明不足の部分を書き足します。そして、その原稿を著者に最終チェックしてもらい完成原稿にしていきます。

本作りに関するゆるやかな共通認識を

最初にゴーストライターを利用する場合も、同様の過程は欠かせないものと思われます。プロのライターも、会計については素人。「適当に書いておいて」と頼んで、その原稿をそのまま自分の名前で出版することの怖さは、会計人ならわかるはずです。
綿密な事前打ち合わせだけではなく、ゲラチェックで法律、ケーススタディの数字、用語などの表現の一つ一つを慎重に精査し、編集者と再度打ち合わせをしながら書き直した上で、やっとゴーサインを出すことになるのでしょう。
会計の知識は、専門家だけのものではなく、経営者、また一般の方々にも必ずプラスになります。そして、編集者・ライターにもプロの技術があります。知見をあまねく広めるための本作りの方法論は必要だと思います。
ここまで言って良いものかわかりませんが、「どんな形であれ初稿だけは『著者』が書かなければならない」というのは、もはや「精神論」に近いものではないかという気もします。

ゴーストライターの「アウト・セーフ」の線引きについては、ひとりひとりに違った考えがあっても良いと思います。しかし、「どのような本も、ひとりでできるものではない」という認識は共有しておきたいものです。その中で、書き手と作り手、そして読者に、ゆるやかな合意が見出されることを望むばかりです。

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