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【コラム】今の税制がサラリーマン根性の要因だ

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【コラム】今の税制がサラリーマン根性の要因だ

「節税会社員」が急増中

個人事業主である筆者は、会社員を辞めてから確定申告をすることになり、自分の所得状況や税制度というものに向き合って初めて実感するようになったわけですが、最近はサラリーマンでも「節税」への意識が高まりつつあるようです。税理士の皆さんは既に注目されている動きだとは思いますが、日経電子版にこんな記事が載っていました。

会社員も節税の時代 税務署が認める必要経費は(2014年6月8日・日経電子版)
個人の毎年の所得にかかる所得税を減らす有力な方法が「必要経費」の活用だ。仕事で得た収入から差し引ける経費を税務当局にいかに多く認めてもらうかがカギとなる。その必要経費の範囲が司法判断や制度拡充により広がる兆しがある。税務当局のハードルは依然高いものの、ツボを押さえればより節税につながるかもしれない。

記事によると、「必要経費」の考え方を巡って国との間で争われた訴訟があったそうです。この1月の判決により、仕事との関連性でジャッジされてきた必要経費に関して、当面の収入に結びつかない交際費についても税務当局が一概にNGを出せない状況に変わりつつあるようなのですが、これまで自営業者と比べて節税が認められづらかった会社員に関しても、いわゆる「特定支出控除」の対象が2013年から広がったことで確定申告に向き合うインセンティブが働きつつあるようです。仕事に必要な書籍を購入した場合の「図書費」、スーツなどの「衣服費」、得意先を接待した際の「交際費」について、確定申告で特定支出控除を利用した会社員や公務員は13年度が1600人と、前年の6倍となったそうです。(2014年9月1日・日経朝刊)

サラリーマンが節税に思考停止してきたワケ

ただ、数字のマジックといいますか、モノはいいようなんですよね。6倍増はファクトとして存在しているものの、ちゃんと確定申告をしているサラリーマンは、たかだか1600人しかまだいないわけです。国の統計によると、2014年5月時点では、全労働力人口6,398万人のうち、「役員を除く雇用者」は5,592万人(正規雇用3,324万人、非正規1,921万人)。一方、自営業者は771万人もいます。自営業者は原則、自分で確定申告しているわけですから、節税に自分で向き合っている勢力バランスとして「節税会社員1600人 VS 自営業者771万人」という、多勢に無勢もいいところです。

私自身もサラリーマン時代は自分がいくら税金を払っているのか無頓着だったので、フリーになってから「げっ、区役所にこんなに持っていかれていたのか(怒)」と思っておる次第なんですが、世の会社員の大多数が税務署の存在を意識しない背景としては、源泉徴収というシステムで給与から自動的に会社を通じて天引きされていることが最大の要因です。源泉徴収制度は、最初に導入された英仏を含め、国家が戦費調達のために国民から一律かつ効率的に税金を巻き上げるシステムとして開発されました。日本でも制度時代は日露戦争の準備として導入され、日中戦争真っ只中の1940年、給与所得者、つまりサラリーマンにも適用された経緯があります。

ところが戦争が終わったにもかかわらず、源泉徴収制度は現在も続いています。確実に税金を取れるわけですから、国にとっておいしい制度であり、「既得権益」になっているわけです。アメリカのように会社員でも税理士や各種サービスを使って自分で確定申告をしている国もある一方で、日本はずっと会社経由の自動天引きが続いています。確定申告関連の雑務から解放されることで日本のサラリーマンは本業に集中でき、だからこそ戦後、世界史に残る高度成長を達成したと言えなくもありませんが、逆に言えばサラリーマンが納税に関して「思考停止」した側面があるのは確かです。

源泉徴収制がなくなって喜ぶのは税理士だけ!?

一方、自営業者、フリーランスは簿記を自分でつけるようになると、「公租公課」というところで税金という名の経費に直面します。ただ、ビジネスパーソンたるものアカウンティング、ファイナンスの素養が求められ、コスト管理は常に課題なはずなので、税金に向き合う環境さえ整えば、もっと節税への意識向上・行動実践につながるはずなんですよね。税金は国家の基本なので、それを意識することで選挙権を安易に放棄したり、訳も分からず候補者を選んだりすることもなくなります。今年に入って連発する地方議会の不祥事連発は、有権者の参政意識の低下の産物であり、サラリーマンの多くが税金に向き合ってないから、行政サービスへの関心も低いのだと考えざるを得ません。

終身雇用制が崩壊した昨今では、「サラリーマン意識を捨てろ」だとか「起業家目線で仕事をしろ」だとか、意識の高いムチャぶり言説がはびこっていますが、もしかしたら源泉徴収制度を亡くしてしまえば、自営業者並みのコスト意識、節税意識が一発で芽生えるような気もします。もっとも、そんなことになって喜ぶのは、アドバイス業務で商機が広がる税理士さんだけで、ただでさえ税収を増やしたがっている国や自治体は猛反対するのは言わずもがな、なのが現実です。
しかし、働き方の多様化など社会システムが大きく変わってしまっている中で、源泉徴収制度というものが今のままでいいのか、現在起きている様々な問題の「元凶」になっている側面について、もっと活発に論議されてもいいとは思うのですがね。まあ、そんなことを言っていると税務署から報復で調査をかけられそうなので、この辺にしておきます。こわいっ!(汗)

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(文/新田哲史=ブロガー・ソーシャルアナリスト、記事提供/株式会社エスタイル)

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