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【コラム】アップル租税回避の妙技とは?

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 【コラム】アップル租税回避の妙技とは?

iWatchの発表でファッション業界へと足を踏み入れ、さらに進化していくアップルですが、アメリカ国内だけでなく世界的にもその租税回避の手法が非難され始めています。今年の春にアップルのCEOティム・クック氏はアメリカ議会上院に呼ばれ、アメリカでの租税回避を追求されました。アップルがそのほとんどの利益を本社のあるアメリカではなくアイルランドで計上しているという指摘について説明を求められたのです。そのからくりの一端を見てみましょう。

「まずは移転価格で利益を移転」

アメリカの実効税率は連邦税だけで35%です。これに対しアイルランドの実効税率は12.5%とかなり低いのですが、アップルの場合アイルランドでの実質的な税率は2%ほどのようです。アップルはアイルランドに子会社を設立し、この子会社がアップル製品を中国の委託製造会社から購入、世界の販売会社に売る形式になっています。アイルランド子会社から世界の販売子会社へ販売される価格は移転価格を適用することにより、その利益のほとんどを販売国からアイルランドに集めることができます。移転価格での売買はグローバル企業であればよく見られることですが、アイルランドという国であることがさらにキーになってきます。

「どこの国の居住者にもならない”からくり”とは」

アイルランドでは国内に会社を設立し、4000人を雇用すれば会社の経営管理機能が国外にある限り、税法上の非居住者となります。アップルはアイルランドに3社の子会社を持っていますが、これらは取締役会をアメリカで開き、取締役のほとんどがアメリカに居住しているため、アイルランド税法上は非居住者となります。そしてこれらアイルランド子会社はアメリカ税法上も非居住者となっています。アメリカにはチェックザボックスという規定があり、特定の事業体(例えば日本であれば株式会社)以外の事業体については納税者がその事業体を課税主体とするのか、またはパススルーとして構成員課税とするのかを選ぶことができます。これを利用し、事業体課税を選択すれば、会社を設立した国の居住者に、構成員課税を選択すればその構成員のいる国の居住者になります。これでアイルランド子会社はアメリカでも非居住者となったのです。これでアップルの利益の多くが計上されるアイルランド子会社はどこの国の居住者でもなくなることができたのです。

「合算課税を免れるチェックザボックスの妙技」

ここで一つ問題が出てきます。アメリカにも日本で言うタックスヘイブン税制に類似した税制があり、アイルランド子会社の利益をアメリカで合算課税される可能性があるのです。しかしここでもチェックザボックス規定が有効に機能します。アメリカ本社が100%保有しているアイルランド子会社は海外の販売子会社を始めアイルランドにあるその他2社も100%保有しています。このうちアイルランド子会社より下の会社をチェックザボックスによりパススルーとすることでアメリカから見ればアイルランド子会社が保有する会社はアイルランド子会社の支店(構成員課税)と見なされ、これらの会社間の取引は見えなくなります。つまり、アイルランド子会社がエンドユーザーと直接取引をしていると見えるのです。そしてエンドユーザーとの直接取引は合算規定の例外にあたるため、アメリカでの合算課税を免れることができるのです。

アップルの手法は今のところ違法性はなく、各国の税制と租税条約を利用した租税回避のようです。しかし世界的にグローバル企業の税率の低さは問題視されており、主要国が調査に乗り出し、OECDが提言をするなど、今後は各国が協力して租税回避の抜け道を塞いでいくという潮流は避けられないでしょう。

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