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【会計士Xの裏帳簿】美術品の減価償却 通達変更で新鋭アーティストにチャンス到来?

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【会計士Xの裏帳簿】美術品の減価償却 通達変更で新鋭アーティストにチャンス到来?

国税庁は10月10日、税法上の減価償却資産の扱いに関する法令解釈通達の変更について、意見を募集。変更を予定しているのは、会社等で購入する美術品が減価償却できるか否かの基準です。

古くなっても安くならない美術品

美術品は会計上、厄介な存在です。会社が絵画等を購入した場合に、時間が経過するごとに価値が減る固定資産として、償却されていくべきものなのか判断がつきにくいためです。

美術品でも、安価なものを会社のロビーや応接室に飾る場合など、償却資産の性格が強いものもあります。しかし、著名な作家のものは年を経るごとに価値が上がることもあります。バブル期に美術品が企業の投資商品として流通したことからみても、減価償却になじまない性格があります。

法人税法施行令では「時の経過によりその価値が減少しないもの」は減価償却資産の範囲から除くとされます。問題はその基準をどこに引くのか。今回の通達変更案は、この基準を変えるもので、減価償却に該当する美術品の範囲を広げるものです。

基準価額の引き上げと年鑑登載基準の廃止

従来の通達では、原則として20万円未満のものは減価償却が可能でした。しかし、美術年鑑等に掲載されている作家のものは、減価償却はNG。今回の変更では、価額による基準が100万円に引き上げられ、年鑑登載基準は廃止するとされました。

美術に門外漢の私にとって、公表されている変更の理由は大変興味深いものでした。

まず、年鑑登載基準の廃止は、「著名な作家であっても美術関係の年鑑等に掲載されていない作品が多く存在すること、いわゆる愛好会の会員等についても年鑑等に掲載されている実態にあること」を理由として挙げています。

そして、私が最も面白いと感じたのが基準価額の引き上げに関する記述です。

「新鋭作家のデビュー作が1点 60 万~80 万円で取引される実態にあることや、市場による一定の評価を得ることができる作者かどうかは一般に作品の価格が 100 万円を超えるかどうかで評価することができるといった専門家の意見等を踏まえ」て変更を検討したそうです。

企業の美術品購入を後押しする?

会計・税務は、あらゆるものを金銭的価値に換算し、勘定科目と数字に落とし込む作業。美術品の扱いは、その困難性がよく表れています。しかし、芸術作品にも流通市場があり、企業は買い手として大きな存在であることは間違いありません。市場の実態を常に見て、会計の基準をそれに合うものとする必要があることを改めて感じました。

そして、税務当局の動きは、市場に参加する人の行動を変えます。関与先にアーティスト、美術商の方がいる会計人の皆様は「来年は企業の美術品購入が増えるかもしれませんよ」と勧めてあげるとよいかもしれません。とはいえ、思わずそのような発想をしてしまう私は、やはり芸術についての門外漢たらざるを得ないとも感じるところです。

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