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【コラム】法人税減税、赤字企業は負担増  税負担の公平性はどうなる?

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【コラム】法人税減税、赤字企業は負担増  税負担の公平性はどうなる?

去年の平成26年1月に行われたスイスのダボス会議で、安倍総理が「本年、さらなる法人税改革に着手する」と表明したとおり、平成27年度より法人税が改正されることになりました。以前から日本は他の先進諸国に比べ法人税の実効税率が高いといわれてきましたが、新税制は課税ベースを拡大し、実効税率を下げることで、黒字企業は減税となる代わりに、赤字企業には課税を強化することになっています。 今回は、この税制改正、特に法人税減税の詳細と問題点について迫ってみたいと思います。

法人税減税の背景

前述の「日本は他の先進諸国に比べ法人税の実効税率が高い」について掘り下げてみると、日本の平成26年度の実効税率は35.64%であるのに対し、他の先進諸国は、米国(カリフォルニア州)40.75%、フランス33.33%、ドイツ29.59%、英国21%、中国25%、韓国24.2%、そしてシンガポールについては17%となっており、相対的に高い印象があります。(引用:経済産業省「平成27年度 経済産業関係 税制改正について」)

ただ、財務省の資料によれば、企業利益の合計に対して、各種の非課税措置を適用した後、実際に課税された金額の割合をみると、日本は2010年で31.9%となり、実に7割近くが課税されていないことが分かっています。政府はこの点に着目し、今回の税制改正では課税ベースの拡大に至ったわけです。

税制改正の詳細

では、具体的にはどのように課税ベースが拡大するのでしょうか。結果として増税になる点を大きくまとめると、
1、 欠損金繰越控除限度額の縮減(大企業のみ、80%から65%、平成29年4月1日以降は50%)
2、外形標準課税の課税強化。所得がなくても課税される付加価値割(0.48%から0.72%、平成28年4月1日以降は0.96%)及び資本割(0.2%から0.3%、平成28年4月1日以降は0.4%)の増税
3、受取配当益金不算入制度の縮減(現行の持ち株比率の基準を見直し、これまでの25%未満は50%、25%以上は100%益金不参入割合だったのに対し、今後は5%以下の場合は20%、1/3以下の場合は50%を益金不算入)
となっています。

一方で減税となるのは、
1、 法人税率の引き下げ(25.5%から23.9%)
2、 所得拡大促進税制の要件を緩和し、継続して着実に賃上げに取り組む企業をサポート(要件を満たせば、法人税額の10%「中小法人は20%を上限」の税額控除)
3、特別試験研究費の控除率を、12%から30%(条件あり)へ増率
となっています。

税負担の公平性はどうなる?

経済産業省は、今回の法人税実効税率の引き下げは、賃上げや設備投資などの前向きな投資を加速し、下請・中小企業の取引条件が改善され、さらなる経済の好循環を実現することと、国内企業の更なる生産拠点・研究開発・本社機能の海外移転をおしとどめることを目的としています。

一方で、今回の外形標準課税の拡大は、実際には負担能力のない赤字企業にも課税することになり、税負担の公平性が実現されていないとの指摘もあります。

平成26年6月に帝国データバンクが全国2万3118社(有効回答企業数は1万571社、回答率45.7%)に行った「法人税減税に対する企業の意識調査」によると、法人税減税により5割超の企業が日本経済の活性化につながると認識しているものの、「外形標準課税の拡大」には企業の4割が反対で、賛成・反対ともに税の公平性を求める企業が多くなってきました。

欠損企業は全体の7割を超えており、今回の税制改正は法人税を払うことのできる黒字企業のみに恩恵をもたらすとも解釈されかねません。政府もこのような企業の声に慎重に耳を傾け、政策を遂行していくべきでしょう。

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