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【会計士Xの裏帳簿】外れ馬券の購入費は「必要経費」!? 通達改正の行方は…

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【会計士Xの裏帳簿】外れ馬券の購入費は「必要経費」!? 通達改正の行方は…

3月10日、馬券の払戻金について、一時所得ではなく雑所得に該当する場合があり、その場合、当たり馬券の購入費だけでなく、その他の外れ馬券も所得金額の計算上控除すべきとの判決が確定しました。これを受け国税庁は、該当する通達を改正する予定です。

馬券購入は「一体の経済活動」

競馬の払戻金は一時所得として、総収入金額から「その収入を生じた行為をするため、又は、その収入を生じた原因の発生に伴い、直接要した金額」等を控除して計算をします。したがって、競馬の払戻金は当たり馬券を購入した金額のみが控除の対象となっていました。

今判決で争われたのは、馬券の購入を機械的、網羅的、大規模に行い、それが客観的に認められる記録が残されているケース。被告人は、馬券の購入、決済を自動化するサービス、ソフトを使用して長期間にわたり大量に馬券を購入。中央競馬のほとんどのレースで、一日数百万円から数千万円、一年当たり 10 億円前後の馬券を購入し続け、3年で30億円以上の払戻金、約1億4000万円以上の利益を得ていました。

判決では「一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するといえる」として、払戻金を一時所得ではなく雑所得と認定。30億円以上の収入から当たり馬券のみの購入費を控除するのではなく、総収入金額から「必要経費」となる、外れを含む馬券購入費を控除できるとしました。

一時所得は無理がある、しかし…

私は、初めてこのニュースを聞いた時、被告は所得税について無申告であり、問題とされることは致し方ないとしても、「一時所得にされるのはあまりにひどいな」という感想を持ちました。今回、雑所得であると認定した判決自体は妥当ではないかと思います。

競馬の払戻金への課税はそもそも無理があります。払戻金が一時所得であることを厳格に適用すれば、かなり多くの競馬ファンは、合計で大負けしていても、少なくとも税法上は納税の必要があることになります。しかし、収入の捕捉は非常に困難であり、税務申告をしている人はほとんどいないでしょう。今回の被告人は、「目立ちすぎた」ことから当局に目をつけられたといえます。

とはいえ、払戻金について皆が税務申告を行うと仮定して、一時所得ではなく雑所得にできるようにすることも問題です。レース後に客席に散らばっている外れ馬券をかき集め、必要経費として申告する人が続出すると予想されるからです。

通達改正でも根本的な問題は残る

国税庁は、馬券の払戻金に関する通達である、所得税基本通達 34-1の改正について「少なくとも判決と同様の馬券購入行為の態様、規模等により馬券の払戻金を得ていた方については、その所得を一時所得ではなく、雑所得として取り扱い、法令上、可能な範囲で是正を行うことが適当」としています。

「少なくとも」の部分がどれほど広がるのか、という部分が問題となりますが、いずれにしても通常の競馬ファンの外れ馬券は、従来通り経費とならないでしょう。そして、競馬の払戻金の課税についての根本的な問題は、やはり手つかずにならざるをえない気がします。

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