会計業界の業界動向・トピックス

会計業界トピックス

【コラム】「不適切な」会計処理=「不正(粉飾)」なのか?

会計業界トピックスの一覧へ戻る



【コラム】「不適切な」会計処理=「不正(粉飾)」なのか?

5月8日、東芝は不適切な会計処理が発覚したため、2015年3月期の業績予想を取り消し、決算発表を6月に延期しました。発表によれば、同社の「不適切な」会計処理は、複数のインフラ関連工事で原価を過少に見積もっていたとのことです。

また、東京商工リサーチが行った「2014年度『不適切な会計・経理を開示した上場企業』調査」によれば、2014年度(2014年4月~2015年3月)に「不適切な会計・経理」により過年度決算に影響が出た、あるいは今後影響する可能性があることを開示した上場企業は42社となり、前年度(38社)を上回り、調査開始以来、最多を記録しました。

昨今使われるこの「不適切な」という表現ですが、ここではかつて使われていた「不正(粉飾)」とどう違うのか改めてふれ、そして過去の不適切な会計処理の事例についても見てみたいと思います。

「不適切」と「誤謬」、そして「不正(粉飾)」の違い

2012年3月に日本公認会計士協会が発表した「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」によれば、不適切な会計処理の定義は、「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる誤り」としています。

「誤謬(ごびゅう)」とほぼ同義ですが、違いは誤謬が「意図がない」に対し、不適切は「意図的であるか否かを問わない」という点です。

一方で「不正」は、「財務諸表の意図的な虚偽の表示であって、不当又は違法な利益を得るために他人を欺く行為を含み、経営者、取締役等、監査役等、従業員又は第三者による意図的な行為(監査基準委員会報告書第 35 号『財務諸表の監査における不正への対応』第6項)」と定義されています。

よって、「意図がある」のが「不正」、「意図がない」のが「誤謬」、そしてその両方が「不適切」といった位置付けになります。 今回の東芝の不適切な会計処理も、現時点ではこの問題に何らかの意図があったか否かは不明のため、「不適切」という表現を使ったことがうかがえます。

「不適切」な会計処理の事例 ‐ 株式会社みんなのウェディング

2014年11月、みんなのウェディング社は、ブライダル事業本部の売上の一部において、実態を伴わない売上が含まれていたことが判明したため、その詳細と今後の対応策を報告しました。

同社の報告書によると、従業員(以下、「担当者」)の親族のウェディングに係る12百万円の売上が計上されていましたが、会計監査人監査にてその実在性に疑いが生じたため、社内調査を行いました。その結果、担当者の親族のウェディングは行われておらず、代表取締役及び担当取締役が担当者に指示をしてブライダル事業のプロモーション用の撮影を行い、その売上に係る入金は、代表取締役の個人資金から拠出されていたことが判明しました。業績未達を少しでも穴埋めするために、このような行為に手を染めたというものでした。

この実態を伴わない売上は、監査修正で反映済みだった為、決算発表後の修正は不要でしたが、今回の件で代表取締役は辞任し、今後は社内の内部統制の改善を図るとのことでした。

KPMG FASが2014年11月に発表した「日本企業の不正に関する実態調査」によれば、不正発覚の経緯は、内部統制といったものよりも、内部告発が多いそうです。みんなのウェディング社の例は、監査を担当した会計士が不適切な会計処理を発見したのか、内部告発があったのかは不明ですが、不適切な会計処理を起こさせない、起こってしまった場合は発見に繋げる仕組み作りを強化していくことが重要ですね。

【この記事を読んだ方におすすめのサービス】
≪会計業界の転職はプロにおまかせ!≫無料転職サポートサービスとは?
≪転職で譲れないポイントを相談&発見!≫無料転職相談会・無料転職セミナー

ページの先頭へ

業界動向
転職・求人情報
個別転職相談会・セミナー
カイケイ・ファンについて

プライバシーマーク