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【コラム】英国最大陶器メーカーの始祖ウェッジウッドにみる、原価計算の世界史

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【コラム】英国最大陶器メーカーの始祖ウェッジウッドにみる、原価計算の世界史

2015年7月のロイター通信によれば、東芝の不適切会計問題について、過去に受注した高速道路のETCシステムや次世代電力計(スマートメーター)など複数の案件で、いずれも受注時に原価割れを知っていながら、実現不可能なコスト削減計画で損失処理を先送りし、2009年度から2014年度の6年間で、累計1千数百億円の営業利益が過大に計上されたことが判明したと報道されています。

名門企業の東芝が不適切な原価計算処理により大きく揺れている今、同社が行った原価計算の手法が注目されています。ここでは、そもそも原価計算がどのようにして発達していったか、その歴史を少し覗いてみたいと思います。

原価計算の起源 14世紀ヨーロッパ

西島恒憲氏が第一経大論集に寄稿した「原価計算の発展に関する一考察(第一経大論集 第17巻、昭和62年12月31日発行)」によれば、原価計算の実務と理論は、産業革命のさらに昔、14世紀のイギリス、イタリア、フランダース(今のベルギー北部・フランス北部・オランダ南部の一部)、そしてドイツの毛織物、絹織物、書籍、鋳貨その他の製造に従事する様々な個人や組合によって工業社会が設立され始めた頃までさかのぼり、イギリスのヘンリー7世(在位1485~1509年)の時代に最初の発展が起こったといわれています。ギルド(西欧諸都市において中世より近世にかけて商工業者の間で結成された各種の職業別組合)規制に反感を抱いた多くの小規模の毛織物製造業者たちは、都市から村へ移動し自らの工業社会をつくり、他の販売経路による製品の販売を試みました。その後、工場経営者たちは、同業者との価格競争に少しでも勝てるよう、より正確な原価記録が必要になり、それが事業成功のための前提条件と学ぶようになりました。

ジョサイア・ウェッジウッドの原価計算論

では、イギリスのウェッジウッド社の創始者であるジョサイア・ウェッジウッド(1730~1795年)はどのようにして原価計算を展開していったのでしょうか。

ジョサイアが生きた18世紀の産業革命時代は、不況と同業者間の激しい競争に悩まされた時代でした。当時は原材料費が製造原価の大部分を占めていたため、ジョサイアは、重量のある陶器の生産に粘土が多量に使われ、そして無駄になった粘土が会社の大きな損失になることを従業員たちに説いてきました。

また、在庫の増加が資金繰りを圧迫し、経営を危険にさらすことに気づいた彼は、1772年8月に、同社で生産した31種の飾り壺それぞれの単位原価を算出しました。製陶業で行われた最初の原価計算です。これは、当時落ち込んでいた売上を奪回し、これまでの顧客であった上位階層だけでなく、新たに中間階層を獲得するためにどこまで販売価格が引き下げられるか検証するため、そして高級品の生産にありがちなコストの増加を防止するために行われたものでした。このように、彼は製品ごとの緻密な原価計算を行うことで、高い品質でかつ幅広い層の人々が使える製品づくりを目指し、工場を再建し、会社を繁栄させていったのです。

東芝の営業利益の減額修正額は、総額で1,700億から2,000億円の見通しであると報道されています。東芝のような大企業にとって、今回の影響が大きいと見るか小さいと見るかは異なった意見があり、また同社の内部統制機能や会計監査の不備についての指摘もあります。しかし、元来、どのような目的で原価計算が発達し、経営意思決定資料として使われていったのかに改めて立ち返り、二度とこのような事態が起こらないでほしいと思います。

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