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【会計士Xの裏帳簿】遺言控除は、適切な遺言書作成のための切り札になるか?

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【会計士Xの裏帳簿】遺言控除は、適切な遺言書作成のための切り札になるか?

相続・事業承継対策を立てる際、重要な存在となるのが遺言書。相続争いを避けるためには、遺産分割の割合だけではなく、不動産や自社株式等の重要財産の相続人指定等、被相続人の意思を遺言ではっきり示すことが大切です。

控除制度で「争族」は防げるのか?

政府与党は現在、スムーズな相続、次世代への財産移転のため、遺言書の作成を後押しする「遺言控除」の導入を検討しています。これは、遺言を作成した場合に、相続税の基礎控除枠を広げるもので、基礎控除を上乗せする形式が議論されています。

遺言控除の効果については議論が様々あるようです。同制度で恩恵を受けられるのは相続税の納税義務者。しかし、相続争いが起こるのは必ずしも相続税がかかる資産家の富裕層だけではありません。また、富裕層はすでに相続対策を立てていることが多く、控除額増加によって遺言書作成が後押しされる効果は限定的とも考えられます。

しかし、今年スタートした相続税の課税ベース拡大により、課税が想定される人は増加しています。相続税対策への関心はこれからさらに高まると予想されます。同制度導入により、いわゆる中間層への、遺言に関する啓発効果は期待できるでしょう。

公正証書遺言で確実に意思を伝える

そして、同制度に期待されることは、遺言書の作成自体だけではなく、遺言を「公正証書」で作ることへのインセンティブ効果です。遺言には自筆によって作成するもの、公証役場で証書を作成するものがあります。遺言控除制度は、後者の公正証書遺言を対象とすることが想定されています。

自筆証書遺言は、民法で定められた記載事項の欠落や、財産内容、分割方法等に関する記載の不明確さによりトラブルが起こることがあります。また、遺言書を被相続人本人が書いたかどうかで争いになったり、あるはずの遺言書が見つからなかったりといったことも起こりえます。公正証書遺言では、そういった事態はある程度は防ぐことができます。

税制を通して、生前対策の重要性に気づきを

もちろん、遺言があること、公正証書であることによって、相続トラブルが全くなくなるわけではありません。遺言書はあくまで法的な文書にすぎません。相続対策は、生前の話し合いによって、被相続人と相続人、また相続人間の相互理解を深める「心」の部分こそが重要であることは、士業者(税理士等)の専門家が口をそろえていうところです。

税理士にとって遺言控除が導入されることのメリットは、節税アドバイス等の業務が創出できることだけではなく、関与先に対して、税制の解説を通して、生前に行う相続対策の大切さを説き、そして公正証書の制度など、確実に意思表示を行うための選択肢を提示できることなのではないでしょうか。

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