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【コラム】「不適切な会計」と「不正会計」の違いとは

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【コラム】「不適切な会計」と「不正会計」の違いとは 

さて、2015年は何と言っても東芝の不正会計が話題となりました。その際、私自身がよく質問を受けたのは「不適切な会計処理って何? 不正会計と違う点は?」ということでした。似たような言葉が乱立したため、ニュースを聞く度に混乱された方も多いかと思います。
そこで今回は、不適切な会計と不正な会計について説明させていただきます。

誤謬と不正

まず会計監査の世界においては決算書の誤りに対して「誤謬」と「不正」という言葉を用います。ちなみに新聞紙面等で見かける粉飾決算というのは会計監査六法上、不正に含まれるという見方をしております。

どちらも会計上に誤りが生じることですが、それが意図的であるか否かが違いを生んでおります。

 【コラム】「不適切な会計」と「不正会計」の違いとは

上記のとおり、「誤謬」と「不正」との違いは、意図的であるか否かがポイントとなります。

実務上、誤謬の多くは会社内での決算書作成過程や、監査法人の監査の過程で分かることが多く、決算発表前に修正が為されるため大きな問題とはなりません。会社の決算過程で多くの誤りがあれば、内部統制上の重要な問題がわかります。

一方で不正は、不当又は違法な利益を得るために意図的に経営者その他が、正当でない会計処理で歪んだ決算書を作っているということです。
意図的に決算情報を歪めることから、社内のチェック機能は有効に働かないことが多く、誤ったまま決算書が作成されてしまいます。

特に経営者が意図的に不正を実行していれば誤りは是正されることなく、虚偽を含んだ情報に基づき社内で承認が為され、そのまま決算書の作成・開示へと進んでしまいます。

経営者に嘘をつかれたり、誤った会計情報を提供されたりしてしまうと、会計のプロである公認家計士でも不正を発見するのは困難です。

また、多くの場合は一度不正な会計処理をすると、辻褄を合せるためにさらに不正な会計処理や決算を継続し、結果として何年にも及ぶ不正による損失が巨額なものとなってしまいます。

なお、東芝事件の際にはいくつかのメディアで「不適切な会計処理」という言葉が並びました。この「不適切な会計処理」とは「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又は誤用したことによる誤り」と定義されます。

そのため決算書に間違いがあった場合であっても、それが「意図的であるか否か」が不明な段階では「不適切会計」と称されることとなります。東芝事件では、発覚当初は真相を調査中であったため「不適切な会計処理があった」と表現されていたと思われます。調査の結果、意図的であったことが判明した後は「不正会計」に分類されますので、報道も不正会計や会計不祥事と表現が変わっていったと思います。

なお、いわゆる「粉飾決算」は不正会計の枠内で、強制捜査などが入った場合の事例を指すといわれています。

不正会計の主たる手法

この不正会計の手法は沢山ありますが、主たる手法は以下のようなものです。

 【コラム】「不適切な会計」と「不正会計」の違いとは

不正は不当又は違法な利益を得るために意図的に行われるものです。そのため会計上は利益を捻出するために、
・売上を増やす
・費用を減らす
の二方向にインセンティブが働く会計処理を行います。

実態のない売上を作ったり、費用を繰り延べて損失の先送りをして、利益をよくみせたりすることです。

不正を働く心理としては「今は苦しい。今だけ不正をしたとしても、いつかは帳尻が合うだろう」等の思いがあるのかもしれません。しかし企業は会計を通して企業の業績や財政状態を適切に報告・説明する責任がありますので「今期だけは不正をしても大丈夫だろう」という考えは通用しません。

会計は自社の経営状況を適正に示す鏡です。不正への誘惑に負けず適正に会計処理を行い、株主・投資家へ開示をしていきましょう。

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(文/江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史、記事提供/株式会社エスタイル)

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