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【コラム】企業の損益に大きな影響を及ぼす「減損会計」のおさらい

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ソフトバンクグループは、2月10日、2016年3月期の第3四半期(2015年4月1日~12月31日)決算を発表しました。孫正義社長は、子会社である米国携帯電話会社大手スプリントの業績が改善方向にあることを強調し、「これから稼ぎ頭の一つになる」と語りました。

連結ベースで1.9兆円のEBITDA(税引前利益に特別損益、支払利息、および減価償却費を加算した値)に、もっとも貢献したのは国内通信の9,302億円でしたが、スプリントが国内通信に次ぐ7,448億円のEBITDAだったことに基づく発言のようです。

しかし、孫社長の見方を疑問視する声もあります。それは、スプリントが2014年10~12月期に計上した21億ドルの減損損失です。ソフトバンクグループは、会計基準にIFRSを採用しているため、米国基準のスプリントにおける減損を計上しませんでした。会計基準によって処理方法が若干異なる減損会計ですが、ここでは日本基準の減損会計について、簡単におさらいしてみたいと思います。

減損会計とは

減損会計は、資産の収益性が低下して投資額が回収できなくなった、または回収の見込みがなくなった場合、その見積額を財務諸表に反映させるための会計手続きです。「固定資産の減損に係る会計基準」の導入により、2006年3月期から強制適用となりました。 また、中小企業においても「中小企業の会計に関する指針」にて、固定資産の減損が求められています。

減損会計の適用対象となる資産は、固定資産(有形固定資産と無形固形資産)や、投資その他の資産で、後者としては長期前払費用に計上されている権利金なども対象の一つです。

減損会計の手順

減損処理は通常、おおむね独立したキャッシュフローを生み出す最小の単位である「資産グループ」単位で行われます。資産のグルーピング処理後は、(1)減損兆候の認識、(2)判定、(3)測定(減損処理)、(4)財務諸表への注記という流れになります。

(1)の減損兆候の認識では、対象となる資産の営業活動から生ずる損益、またはキャッシュフローが継続してマイナス(見込みも含む)である、回収可能価額を著しく低下させる変化が生じた(見込みも含む)、経営環境の著しい悪化がみられる(見込みも含む)、そして資産の市場価格が著しく下落した、などの事象を認識する必要があります。

(2)の判定では、当該資産の減損損失を計上すべきかどうかを検討します。その資産の「帳簿価額」と「割引前将来キャッシュフロー」を比較し、割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を検討します。

(3)の測定(減損処理)で、具体的にどれだけ損失を計上すればよいかを決定します。その際、「回収可能価額」を求めますが、資産または資産グループから得られる将来キャッシュフローの割引現在価値(使用価値)か、資産または資産グループを現時点において売却した場合における売却価額(正味売却価額)のいずれか大きいほうの額を採用し、その額まで減額します。

(4)の財務諸表への注記では、減損損失を認識した資産、減損損失に至った経緯、減損損失の金額、減損のグルーピングの方法、そして回収可能価額の算定方法を記述する必要があります。

ソフトバンクグループの連結決算(IFRSによる)では、減損処理の際に「時価」ではなく「回収可能価額」を使うため、「回収可能価額は大きい」と主張ができれば、減損処理をしないことが可能です。

ただ、現在のスプリント社の株価は2ドル台で、買収当時の株価を大きく下回っていることを考えると、来たる2016年3月期の日本基準を用いる個別決算では、減損処理が必要となる可能性もあるでしょう。

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