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【コラム】早期改善が求められる「ブラジルコスト」とは

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【コラム】早期改善が求められる「ブラジルコスト」とは

8月5日、ブラジルのリオデジャネイロで、南米大陸初の五輪(以下、リオ五輪)が開催されました。同国の治安の悪さや、ジカ熱感染への不安による選手の出場辞退などもあり、「本当に開催できるのか?」と思っていた人も多いことでしょう。

この他にもリオ五輪開催期間は、ルセフ大統領が政府会計の不正操作で停職中だったり、開催費用として既に組織委員会予算(75億レアル〈約2325億円〉)の約6%に相当する、4~5億レアル(約124~155億円)の赤字を抱えていたりするなど、政治・経済面でも混乱状態です。

ブラジルには、投資や事業継続などにおいて同国特有の問題点・留意点を意味する「ブラジルコスト」ということばが存在します。ブラジルコストは、リオ五輪の経済効果により少しは軽減されるのでしょうか。

ブラジルコストの具体例

ブラジルコストを、経営資源の「ヒト・モノ・カネ」の観点から見てみます。

まず「ヒト」面では、労働・雇用面での過剰な保護・優遇措置をはじめ、高い社会保障費用や頻繁に発生する労働訴訟など、時代遅れで労働者よりの労働法が問題となっています。
また、発給可能なビザでは、出張、就労、永住の3種類がありますが、取得期間の短縮、有効期間の柔軟化(就労ビザの更新は1回のみ、2年毎最長4年まで)、発給条件の緩和(永久ビザの取得に際し、1人20万ドル〈約2,000万円〉の費用が必要)などの改善すべき点があります。

次に「モノ」面では、ブラジルの複雑な税制が挙げられます。同国には56種類の税金があり、GDP比37%にも達する高負担の税、制度が頻繁に変わることなどが問題とされ、企業の税負担が非常に大きくなっています。
さらに、インフラの整備が不十分で輸送に時間を要したり、知的財産権に対する意識の低さから海賊版が横行したりしています。

そして「カネ」面では、政策金利が現在14.25%と10%を超えており、長期資金の調達が困難とみられています。
これらに加え、貧困の差が激しく治安が悪いことや、公開されている情報がポルトガル語のみなどといった点が「ブラジルコスト」として以前から指摘されており、ビジネス環境の改善が求められています。
特に貧困の差においては、裕福な家庭は小学校から私立に通い優秀な公立大学を目指しますが、「ファベーラ」と呼ばれるスラム街では犯罪が横行し、ほとんどの子どもたちは義務教育を完了できず、ギャングになってしまうことが多いようです。

リオ五輪でブラジルコストのカバーは期待できるか

2014年に開催されたFIFAワールドカップに続き、今回のリオ五輪は、競技会場から都市交通まで、様々なインフラ投資を呼ぶため、経済成長が期待されてきました。しかし、輸出の比重が大きいブラジルは、最大の貿易相手国、中国の経済減速や金融市場の混乱などから、インフラ投資が逆に景気を押し下げる要因になっています。
ブラジル地理統計院(IBGE)が発表した2016年第1四半期(1~3月)の失業率によると、前年同時期の7.9%を大きく上回る10.9%に達しました。インフレ率は年々上昇、消費マインドも低迷気味です。このため、多くがリオ五輪の経済効果は限定的とみており、ブラジルコストをカバーできる程のものではないようです。

CCTVアメリカの報道によれば、6月現在、リオ五輪チケットの販売状況は70%ほどですが、2012年のロンドン五輪の同時期と比較すると、売れ行きは遅めです。主催者側は、「これは何でも直前に行動するブラジルの国民性から来ているもので、チケットの売れ行き自体は好調だ」と主張していますが、現在ブラジルが置かれているさまざまな状況を考えると、本当に大丈夫なのかと首を傾げてしまいます。

ただ、4年に一度しかない晴れ舞台のために一生懸命練習し続けてきた選手たちのことを考えると、治安や政治・経済の不安を考えることなしに、安全な環境で競技に集中でき、また観戦者も安心して応援ができるリオ五輪であってほしいと思うばかりです。

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