米国で、自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリ「Uber(ウーバー)」を運営しているウーバー・テクノロジーズ傘下の、自動運転トラックメーカーOtto(オットー)は、現地時間の10月25日、ドライバーなしの自動運転長距離トラックで約5万本の缶ビールの輸送に成功したと発表しました。
しかしこの長距離輸送、トラックは完全無人の状態ではなく、ドライバーが運転席を離れ自動運転システムを監視している状態で自動運転を行い、実際の自動運転はインターステート(州間高速道路)25号の120マイル(約193km)部分で、市街地はドライバーが運転したとのことです。
日本でもCMなどで見かける自動車の自動運転機能。どこまでが可能で、どのような経済効果が期待できるのでしょうか?
自動運転機能、どこまで進んでいる?
ソフトウェアが搭載された自動運転車は、人の「目」にあたるカメラセンサーが歩行者や対向車、信号など周囲の状況を捉え、さらに高精度の地図情報を活用しながら、「手足」となるハンドル、ブレーキ、アクセルを制御し自動走行します。
日本政府が策定した自動運転技術のロードマップによると、自動運転技術は以下の4つに分けられ、いわゆる「自動走行システム」はレベル2以上を指します。日本の主要自動車メーカーも2020年までには「レベル2」の車両を市販する予定になっています。
レベル1:ハンドル、ブレーキ、アクセルのいずれか一つを自動操作(例:自動ブレーキ)
レベル2:ハンドル、ブレーキ、アクセルの複数を自動操作(例:自動車線変更)
レベル3:原則、すべての操作を自動操作(緊急時等はドライバーが対応)
レベル4:完全自動運転(無人運転も可能)
米国では、自動運転車は既に公道を走っています。ウーバー・テクノロジーズ、米グーグル、電気自動車メーカーの米テスラモーターズ、そして大手自動車メーカー各社が自動運転車の開発を手掛けており、その競争は激化しつつあります。今後はさらに増え、10年後には数万台になるという予測がされています。
普及効果と問題点
テキサス大学のコッケルマン教授と、ユタ大学のファグナント准教授は、共著の論文「Preparing a nation for autonomous vehicles」において、全米の自動運転車の普及により減少すると予測される交通事故数と経済効果をまとめています。論文によれば、自動運転車の普及率50%では、走行時間の減少が16.8億時間、使用ガソリン量の減少が2.2億ガロン(約8.5億リットル)、金額に換算すると374億ドル(約3.9兆円)で、1自動運転車につき590ドル(約6万円)と、大きな経済効果があると試算しています。
また、公益財団法人 日本自動車教育振興財団が制作している「Traffi-Cation(トラフィケーション)」という情報誌の第42号では、今後、自動走行システムのレベル3か4が実用化されて、現在ドライバー不足に悩まされているバス、タクシー、貨物などの業界において普及すれば、人件費を削減でき、新しい市場が生まれるのではないかと提言しています。さらに、近年増加している高齢者の運転操作ミスなども防げるのではないかとしています。
一方、問題点も挙げられています。まず、事故が起きた場合の責任問題です。事故が減るよう開発が進んでいますが、それでも事故は避けられません。2016年に一般社団法人 日本損害保険協会が発表した「自動運転の法的課題について」によると、レベル1、レベル2はドライバー責任。レベル3は、対人事故については自動運転中の事故か否かを問わず自賠法の「運行供用者責任」の考え方を、対物事故についても過失に基づき、損害賠償責任を負う現行の考え方を適用することで問題はないとしています。またレベル4は、従来の自動車とは別のものとして捉えるべきで、損害賠償責任のあり方については自動車の安全基準、利用者の義務、免許制度、刑事責任のあり方など、自動車に関する法令等を抜本的に見直した上で論議する必要があると書かれています。
次に、システムハッキングの問題です。テロ行為なども含めた、外部からの悪意あるハッキングには警戒が必要です。故意に事故を起こさせる犯罪行為が発生する可能性もあります。他にも、自分で運転をしなくなることから運転技術の低下や、システムの判断不足などさまざまな問題をはらんでいます。
人々の生活が便利になるだけでなく、今後の産業構造まで大きく変化する可能性もある自動運転機能。技術の進歩は多くの経済効果や利便性をもたらしますが、同時に雇用不安などをもたらさないよう、政府は充分に対策を練ってほしいものです。
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