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ゴーイングコンサーンに関する注記、その意味は?【コラム】

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「ゴーイングコンサーンに関する注記」、その意味は?【コラム】

自動車用安全部品製造大手のA社は、2月10日に米司法省へ欠陥エアバッグの異常破裂問題に関する罰金支払いなどで2016年4~12月期に合計1,118億円の特別損失を計上し、2017年3月期の連結最終損益が200億円の黒字予想から640億円の赤字になる見通しと発表しました。この特損の計上により、初めて事業継続のリスクを示す「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記」が付きました。注記では、「現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる」などと記載されています。
さて、事業継続のリスクを示す「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記」ですが、一体どのような場合に注記が付くのでしょうか。また、注記が付いた場合はどうなるのでしょうか。

「ゴーイングコンサーン」とは

「ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)」とは、企業が利益を追求し、社会的役割を果たすために存在することから、将来にわたって事業を継続することを前提とする考え方をいいます。監査基準の改訂などにより平成15(2003)年3月期から、継続企業の前提に関して経営者と監査人(公認会計士・監査法人)が検討を行うことが、監査基準の改訂などにより義務づけられました。
経営者が貸借対照表日において、継続企業の前提に重要な疑義を認識し、その事象または状況を解消、あるいは改善するための対応をしてもなお、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、継続企業の前提に関する事項を財務諸表に注記することになっています。
東京商工リサーチが2016年12月に発表した「上場企業「継続企業の前提に関する注記」調査」によれば、2016年9月中間決算を発表した3月期決算の上場企業2,440社のうち、監査法人から「ゴーイングコンサーン」注記を付記された上場企業は20社でした。多くはJASDAQ、マザーズ、名証セントレックスといった新興市場に上場している企業で、製造業が約5割を占めています。注記の理由で最も多いのが、重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュフローのマイナスなどの「本業での不振」を理由としています。

注記の影響は

ゴーイングコンサーンの注記があれば、今後倒産の可能性もないとはいえないことから、当然、投資家たちは投下資金を早期回収しようと考えるため、その企業の株式は売られ、株価に影響します。最近の例を挙げると、大手電機メーカーもこの注記を受け、株価を4%ほど下げることになりました。
また経営者にとっても、企業継続の問題が公にさらされるため、経営者は積極的に再生行動にうつすことになり、結果、その後のパフォーマンス改善の可能性を高めることが考えられている、という研究結果が出ています。
そして注記を行った企業の監査人についても、経営者が他の監査人の意見を聞き、注記が本当に必要なのかを確認したいという行動に出ることから、今の監査人を解任し、新しい監査人を選任する、つまり監査契約解除リスクの増加にもつながるという研究結果も報告されています。

欠陥エアバッグ問題で、A社の財務基盤は悪化しました。2016年12月末の自己資本金は449億円と、2016年3月末に比べて63%減少し、27.5%あった自己資本比率は9.8%と、10%を割り込みました。米司法省と合意した10億ドル(約1,100億円)の和解金のうち、同社が即座に払うのは1億5千万ドルのみで、残りは今後の同社への支援スキームが固まるまで支払いを繰り延べするため、当面の資金繰りについては問題ないとの見解です。しかし2017年末に100億円の社債が償還期限を迎えるため、再建策の早期策定が急務となっており、今後の動向が注目されます。

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