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【シリーズ 資格プラス@】第10回 数字を効果的に使うテクニック(前編)

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文字通り、逆転ホームランの快挙だった。

プロ野球・日本ハムが、ドラフト1位に指名した大谷翔平投手(岩手・花巻東高)の入団合意にこぎ着けた「交渉術」が話題になっている。大谷投手は、夏の岩手大会で高校生では初めて160㌔の剛速球をマークした逸材で、ドラフト会議直前に米球界入りの意向を表明。各球団が獲得を回避する中、日本ハムは強行指名した。

大谷投手の米球界入りの意思は相当堅かった。単なる憧れではなかったのは、メジャー球団の中に彼が1年生の時からスカウトを送り込んで高い評価を下す動きもあったからだ。 両親は渡米には消極的だったが、本人はそれでも挑戦するつもりだったと報じられていた。18歳とはいえ、渡米の覚悟を翻意させるのは並大抵ではない。栗山英樹監督を始めとした球団側が誠意をもって交渉するだけでは難しいだろう。一昔前のように、家族や指導者などの関係者をあの手この手で籠絡するような手法は、今回は通用しそうにない。

決め手は「数字」だった。日本ハムは前代未聞の資料を作成して交渉に臨んだ。タイトルは「大谷翔平君 夢への道しるべ~日本スポーツにおける若年期海外進出の考察」。ダルビッシュを始め過去のドラフト対象選手の評価一覧を示し、即戦力扱いの「◎」が付いた9選手について「MLBで即戦力となる実力をNPB(日本プロ野球)で身に着けることが◎を高める」とアピールする。さらに韓国の事例も含め、国内プロ野球の経験者と未経験者の渡米後の活躍状況を分析。日本で国内実績のある42人のうち、MLBで活躍したのは29人(69%)とする一方で、日韓で国内実績のない108人のうち、MLBで活躍したのは6人(5.6%)と弾き出した。

注目すべきは、サッカーや柔道、卓球といった他の競技とも比較した点だ。各競技を「競技力」「競技環境」「生活環境」「年俸」「人気」と5つの指標を5段階のレーダーチャートで点検。①「国内に拠点を置くべき場合」②「若年層から海外に拠点を置くべき場合」③「選手として確立してから海外に拠点を置くべき場合」に分けた。たとえば柔道なら競技力、競技環境は日本国内が5点だが海外は共に4点以下であることから「海外進出の必要はない」といった具合に分かりやすく分析している。数字を効果的に使い、多角的な検証を掘り下げたことでメジャー挑戦へ頑なだった18歳の決意を揺るがせることに成功した。

会計士や税理士は、数字を扱う仕事である。財務諸表を読み込む上で自分自身が数字に強くあるべきなのは言うまでもないが、クライアントに財務や経営の課題や改善点を提示する際、資料などでその数字を具体的に視覚化することも重要だ。たとえば「在庫コストが○○円かかっています」と改善を促す場合、単年度で示すよりも、経年単位、あるいは他社と比較するなどして伝わりやすくするのも一手かもしれない。

なお日本ハムの大谷投手への「プレゼン」は、NHKのニュースウォッチ9がメイン特集で紹介するなど野球の枠を超え、ビジネスパーソンの関心をも募った。反響の大きさから、球団はホームページで大谷投手を口説いた資料を公開(選手の個別評価は非公表)。球界でこうした内部資料の開示は異例だ。

【関連シリーズ】
【シリーズ 資格プラス@】第11回 数字を効果的に使うテクニック(後編)

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【シリーズ 資格プラス@】第10回 数字を効果的に使うテクニック(前編)
【シリーズ 資格プラス@】第1回  稼げる税理士、稼げない税理士
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