まず規模の点ですが、これは人数が多ければ良い、というものではありません。人数が多ければそれだけ優秀なスタッフも多く、事務所のサービス内容としても高度なものを手がけていることが普通です。但し、それは「事務所として」であって、「あなた個人」のためになるかはまた別問題です。組織が大きいだけに、仕事が細分化され、記帳代行のようなある一定の仕事だけ任される、というケースもあります。また所長先生もしくは中核となる税理士と距離感が生まれる、ということもあるかもしれません。この点では、少人数の事務所のほうが所長先生、即ち経験豊富な税理士と直に接することができ、手取り足取り教えてもらえるというメリットがある、と言えます。
勿論、大手の事務所であっても、スタッフ教育には力を入れ、所長を中心とした勉強会を数多く開き、また組織制度としてもジョブローテーションを積極的に行う仕組みを作り、幅広い経験を積めるところもあります。もしくは、既にある程度基礎的な経験は積んだ、という方であれば、教えてもらうというよりは切磋琢磨できれば良い、という考え方もあるでしょう。
要は、事務所の人数に囚われて判断するのではなく、その事務所の人員構成や教育方針が、果たして自分の求めているものにあっているのか、という目を持つことが重要です。
次に顧問先の内容です。当たり前のことですが、顧客のニーズに応じたサービスを提供するのが会計事務所ですから、「どんな顧客を持っているか」ということで、その会計事務所の実際の業務内容を推測することができ、ひいてはあなたの目指すキャリアアップにつながるかどうか、を判断することができます。英語力を伸ばしたい方であれば外資系企業を顧問先に持っているかどうかをチェックするべきですし、上場企業やそれに準ずる企業もしくは株式公開を目指しているいわゆるベンチャー企業が顧問先にある会計事務所であれば、単なる記帳代行や申告業務以外の高度なコンサルティング案件も数多く持っていることでしょう。逆に、経営者とより身近に、肩を組んで仕事をしたいのであれば、大手企業ばかり相手にしている会計事務所よりも、地元の小さな企業を相手にしている会計事務所のほうがその充実感を味わえるかもしれません。
最後に、所長先生の人柄、です。上記の「規模」や「顧問先」も重要なのですが、会計事務所は何といっても「どんな先生がいるか」です。ここでは経歴や実績よりも、あえて「人柄」(=仕事に対しての考え方、と言い換えても良いかもしれません)の点を強調させて頂きます。
仕事をする、ということは人間関係の積み重ねです。ましてや「モノ」ではなく「サービス」を提供する会計事務所であれば尚のことです。即ち、あなた自身が仕事をする際にも、様々なビジネス感覚、人間関係の構築力を身につけていかなくてはなりません。どんなに高度な会計・税務の知識を身につけたとしても、相手との信頼関係を作れなければ、全く意味を成しません。
知識が身につくか、だけでなく、自分がビジネスマンとして成長できる目標があるかどうか、平たく言えば、自分が「この人についていきたい」と思える先生がいるかどうか、はぜひ事務所選びの視点に加えてください。また、他人にそう思わせる先生であれば、スタッフ教育にも力を入れており、顧客に対しても良いサービスを提供しており、実務面でも学ぶことは多いと思います。
事務所に入る前にこれを判断する機会というのは、講演や著作物のある先生であれば、そこで一端に触れることもできますが、まずは面談の時しかないのが普通です。ですので、その面談の場で、遠慮をせずにどんどん先生に質問を投げかけ、スタッフに対してどんな考え方を持っているのか、仕事上のモットーは何なのか、といったことを引き出してください。勿論、一方的にしつもんするのではなく、あなたのほうからも、自分自身のやりたいこと、目指しているものをしっかりと伝えることが重要です。
そういった質問に対して、しっかりと受け答え、またあなたに対して理解を示してくれる先生がいるのであれば、そこがあなたのキャリアアップにつながる場であるはずです。 |